大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和61年(行コ)95号 判決

控訴人

茂田郁次郎

茂田淳子

茂田晃

被控訴人

君津市久保土地区画整理組合

右代表者清算人

佐久間惣治

右訴訟代理人弁護士

滝口稔

主文

一  原判決主文第二項を次のとおり変更する。

1  控訴人茂田郁次郎、同茂田淳子の、被控訴人が昭和五七年三月二三日付で訴外高橋正司、同高橋文子に対してなした原判決別表四記載の換地処分の取消しを求める訴えを却下する。

2  被控訴人が昭和五七年三月二三日付けで控訴人茂田郁次郎、同茂田晃に対してなした原判決別表一記載の換地処分のうち清算金処分の部分を取り消す。

3  控訴人らのその余の主位的請求並びに控訴人茂田郁次郎のその余の予備的請求及び控訴人茂田淳子の予備的請求をいずれも棄却する。

二  その余の本件控訴をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は第一、第二審とも控訴人らの負担とする。

事実

第一  当事者の求める裁判

一  控訴人ら

1  原判決を取り消す。

2  主位的請求

(一) 控訴人茂田郁次郎(以下「控訴人郁次郎」という。)、同茂田淳子(以下「控訴人淳子」という。)

(1) 被控訴人が昭和五七年三月二三日付けで控訴人郁次郎、同淳子に対してなした原判決別紙物件目録三ないし五記載の土地についての各換地処分を取り消す。

(2) 被控訴人が同日付けでした原判決別表三1記載の換地処分(保留地の設定)のうち原判決別紙図面三のイ、ロ、ハ、ニ、イの各点を順次直線で結んだ部分の換地処分(保留地の設定)及び原判決別表三2記載の換地処分(保留地の設定)を取り消す。

(3) 被控訴人が同日付けで訴外高橋正司、同高橋文子(以下「訴外高橋両名」という。)に対してなした原判決別表四記載の換地処分を取り消す。

(二) 控訴人郁次郎、同茂田晃(以下「控訴人晃」という。)

被控訴人が同日付けで控訴人郁次郎、同晃に対してなした原判決別紙物件目録一及び二記載の各土地についての各換地処分を取り消す。

2  予備的請求

(一) 控訴人郁次郎、控訴人淳子

被控訴人が昭和五七年三月二三日付けで控訴人郁次郎、同淳子に対してなした原判決別表二記載の換地処分のうち清算金処分の部分を取り消す。

(二) 控訴人郁次郎、控訴人晃

被控訴人が同日付けで控訴人郁次郎、同晃に対してなした原判決別表一記載の換地処分のうち清算金処分の部分を取り消す。

3  訴訟費用は第一、第二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

第二  当事者の主張

一  控訴人らの請求原因

1  控訴人郁次郎と同晃とは原判決別紙物件目録一及び二記載の土地(以下「従前地七四一番一、同七四六番三」という。)を、控訴人郁次郎と同淳子とは同目録三ないし五記載の土地(以下「従前地七四四番一、同七四六番一、同七四六番二」という。)を所有している。

その位置、形状のおおよそは原判決別紙図面一のとおりである。

2  被控訴人は、昭和五七年三月二三日付けで次の換地処分をした。

(一) 控訴人郁次郎、同晃に対し原判決別表一の換地処分

(二) 控訴人郁次郎、同淳子に対し同別表二の換地処分

(三) 被控訴人に対し同別表三の換地処分(保留地の設定)

(四) 訴外高橋両名に対し、同別表四の換地処分

これらの換地の位置、形状のおおよそは同別紙図面二のとおりである。

3  原判決別表一、二記載の換地処分は、以下の点で違法であり、取り消されるべきである。

(一) 土地区画整理法(以下「法」という。)八九条の照応原則違反について

(1) 従前地七四一番一に対し君津市久保二丁目一番二〇(以下「換地一番二〇」という。)を換地とする換地処分について

① 原判決別紙図面五の一五―一街区(道路で囲まれた一団の土地・以下「一五―一街区」という。)は、各人の所有でありながら極めて広すぎるため、通行、利用の不自由を来すものであり、かかる設計は、そもそも違法である。このように広すぎる街区を設けることは、控訴人らに私道を設ける負担を強いるほか、将来における盲地・袋地発生の危険、防災上の危険等の様々のマイナスを社会に与えるのであって、かかる換地の違法性は明らかである。

② 従前地七四一番一は間口が広かったが、換地一番二〇は狭くなった。この点については、従前地七四一番一と従前地七四六番三とを一体としてとらえる必要があり、現に控訴人らは、これを一体として使用して来た。そうすると、右一体としてとらえた間口は32.66メートルであるに対し、換地一番二〇のそれは23.66メートルであるから、照応していないことが明らかである。

③ 換地を割り込むには、道路に直角の線を背割りまで引いて換地の筆界とすることになっている(被控訴人の換地細則(以下「換地細則」という。)一六条二項)が、換地一番二〇はそのようになっておらず、違法である。

東側の背割線はカギ型(一部突き出る形)となっており、不整形である。

④ 控訴人らの従前地七四一番一のうち二四三平方メートルは、埋め立て済みの宅地であるにもかかわらず、被控訴人は、これを認めず、田として評価し、整理前の画地評価を不当に低下させて減歩の増大を図り、控訴人らに損害を与えた。

⑤ 従前地七四一番一、従前地七四六番三の実質地先負担地積は83.01平方メートルであるから、別表1記載のとおり、実質公共減歩地積は、理論的な計算によって59.79平方メートルの増換地とならねばならない。計算式は次のとおりである。

地先負担基準地積=台帳地積+加算地積

権利地積=地先負担基準地積−地先負担地積

減歩地積=台帳地積−権利地積

また、換地一番二〇及び君津市久保二丁目一番一九(以下「換地一番一九」という。)は、既成宅地であり、工事は何ら行われておらず、工事費用を負担する保留地減歩の面から見ても宅地の利用増進は皆無であるから、保留地減歩は一切不要である。結局、換地一番二〇及び換地一番一九においては、実質減歩地積203.86平方メートルに増換地59.79平方メートルを加えた263.65平方メートルが地積において照応していない。

⑥ 従前地七四一番一上には、五軒の建物があったのに、換地一番二〇にはそのうち一軒半しか乗っていない。

被控訴人は、控訴人らに建物移転を拒絶されたので移転ができなかった旨主張するが、控訴人らが法七七条に基づく建物移転を拒絶したことはない。被控訴人は、本件建物移転に関して法七七条の照会通知をしていないのであるから、移転の権限は生じていないのであり、移転の権限を持たない被控訴人がその建物移転の申入れをすること自体不可能である。そこで、控訴人らは、〈書証番号略〉の建物移転計画は法七七条の移転とは全く無関係の移転であると理解し、〈書証番号略〉においてそのような建物移転には応じられない旨述べたにすぎない。控訴人らは、右移転計画の根拠について被控訴人に再三質問したが、その回答は、単に「高度に土地利用のできるよう組合で考えております。」というだけで、法七七条の規定によって移転を行うとの回答はついになかった。

(2) 従前地七四六番三に対し換地一番一九を換地とする換地処分について

従前地七四六番三は間口の長さの方が奥行の長さより長かった(なお、従前地七四六番三と従前地七四一番一を一体としてとらえる必要があることについては、前記(1)、②のとおりである。)。

換地一番一九は間口を極めて小さくし、奥行を間口の十何倍の長さにしている。

(3) 従前地七四四番一に対し君津市久保二丁目一番八(以下「換地一番八」という。)を換地とする換地処分について

① 従前地七四四番一は東側及び東北側、西側が道路に面し、出入りがしやすい土地であった。そして、その間口は二〇メートル(少なくとも17.25メートル)あるのに、換地一番八の方は15.5メートルに減少している。

② 従前地七四四番一に建物が六軒あった(原判決別紙図面四)が、このうち三軒が換地一番八に乗っているのみで、あと三軒が乗っていない。被控訴人の建物の移転計画(〈書証番号略〉)によれば、各戸用の進入路は建築基準法の定める制限ぎりぎりの四メートルであるのに対し、従前地においては、実質上それ以上の広さの私道が進入路として設けられていた上、右計画に従うと、出入口の前面が隣地との境界線に接する建物が出てくるため、これらの建物は換地一番九の保留地を通らないと出入りできなくなる。

被控訴人は、控訴人らに建物移転を拒絶されたので移転ができなかった旨主張するが、控訴人らが法七七条に基づく建物移転を拒絶したことのないことについては、前記(1)、⑥のとおりである。

(4) 従前地七四六番一、同番二に対し君津市久保二丁目一番一八(以下「換地一番一八」という。)を換地とする換地処分について

① 従前地七四六番一、同番二は更地で控訴人郁次郎、同淳子の所有である。

換地一番一八には控訴人郁次郎所有の建物が建っている。

これは全く利用状況を無視した換地処分である。

このため、控訴人らは、建物の建っている二か所の土地と更地一か所を持っていたが、本件の土地区画整理のため、将来の価値が最も高い更地一か所(建物を一〇軒建てようとしていた所)を無償収用されると同じこととなってしまったのである。

被控訴人は、控訴人らに建物移転を拒絶されたので移転ができなかった旨主張するが、控訴人らが法七七条に基づく建物移転を拒絶したことのないことについては、前記(1)、⑥のとおりである。

② 換地の画地は、道路に直角の線を背割線まで引いてするものである(換地細則一六条二項)のに、本件換地はそのように設計していないので違法である。

③ 従前地七四六番一、同番二の実質地先負担地積は、152.89平方メートルであるから、実質公共減歩地積は、理論的な計算によって30.56平方メートルの増換地とならなければならない。

計算式は、前記3(一)(1)⑤に記載したとおりである。

また、従前地七四六番一、同番二は、既成宅地であり、工事は何ら行われておらず、工事費用を負担する保留地減歩の面から見ても、宅地の利用増進は皆無であるから、保留地減歩は一切不要である。結局、換地一番一八においては、実質減歩地積278.89平方メートルに増換地地積30.56平方メートルを加えた309.45平方メートルが地積において照応していない。

(5) 控訴人らに対する前記各換地処分について

① 本件従前地の位置は、原判決別紙図面一のとおりであり、これを簡略化すると、別紙図面一のとおりであって、県道の西側に控訴人郁次郎・同淳子所有の一〇九九平方メートルもの更地Aが、東側に控訴人郁次郎・同晃所有の993.52平方メートルの建付地Bと、控訴人郁次郎・同淳子所有の733.87平方メートルの建付地Cが存在していた。

ところが、本件換地処分により、換地は全部県道より東側になり、更地は消滅し、2207.57平方メートルという大面積の土地が中央部に道路もなく出現したものである。これは、明らかに、利用状況、位置、地積において照応しないというべきである。

② 被控訴人は、次のとおり合理的理由もないのに控訴人らに対し故意に不利益な処分をしたが、これは平等原則に違反している。

イ 被控訴人は、次のとおり換地細則に違反し、従前地の評価を不当に低めて減歩を増大させ、控訴人らに不利益を与えた。

(ア) 従前地七四四番一は長大であり、換地細則二九条により、正背地として別紙図面二のとおりA部分とB部分に区分し、A部分については路線価八六〇により評価計算し、B部分については従前地七四一番一と接続した同一所有者のものであるので、換地細則二三条ただし書に基づいて換地細則二八条の正面路線価(九六〇)の袋地計算するのが正当である。

しかるに、被控訴人は、これを誤り、B部分について路線価の低い街路番号18―Bの路線価(七三〇)を採用して、控訴人らに多大な不利益を与えている(なお、被控訴人は、後記のとおり、従前地七四一番一の土地の一部を私道として利用し県道に接続していたとして評価計算しているが、私道として利用した事実はないのみならず、従前地七四四番一のB部分は、換地細則二九条、二三条ただし書により、正面道路に沿接する従前地七四一番一と合筆計算するものであるから、私道に沿接する宅地の評価を規定した換地細則三一条を適用することは誤りである上、そもそも、従前地七四四番一は、道路に沿接する普通宅地であって、私道を設けなければならない無道路地ではないから、換地細則三一条の対象外の宅地であるので、被控訴人の右評価計算は誤っている。)。

(イ) 控訴人ら以外の者に対する次の整理前評価は、故意に控訴人らを不公平に取り扱うものであり、違法である。

小倉盈は従前地(君津市久保字水神免七四三番)を所有しているが、この従前地は換地細則二四条により奥行修正すべきなのに、これをしていない。

ところが、控訴人らの従前地七四一番一及び従前地七四六番一、二については、奥行修正をしている。

坂本亀吉所有の従前地(君津市久保字水神免七三六番二)及び伊藤昌一所有の従前地(同所七四五番二)は、換地細則二六条により三角地修正をすべきなのに、これをしていない。

右坂本所有の従前地(同所七三六番一、二)、右伊藤所有の右従前地、右小倉所有の従前地(同所七四三番、七七八番二)、井祐吉兵衛の従前地(同所七四八番、以下「従前地七四八番」という。)、安藤武男の従前地(同所七四五番一、四)、小松春治の従前地(同所七五二番)及び小林しげの従前地(同所七四九番)は、それぞれ、換地細則三四条により高低差修正をすべきなのに、これをしていない。

(ウ) 従前地七四一番一の画地評価の不正について

従前地七四一番一のうち二四三平方メートルは埋め立て整地済みの宅地であるにもかかわらず、被控訴人は、これを田として評価し、整理前の画地評価を不当に低下させ、減歩の増大を図り、控訴人らに損害を与えた。

(エ) 従前地七四六番三の画地評価の不正について

従前地七四六番三の二〇平方メートルについても埋め立て整地済みの宅地であるにもかかわらず、被控訴人は、これを田として評価し、整理前の画地評価を不当に低下させ、減歩の増大を図り、控訴人らに損害を与えた。

被控訴人は、後記のとおり、控訴人らに土地の譲与を申入れているが、その土地は換地一番九の一部であるから、従前地七四六番三の換地一番一九の面積増加訂正とは全く関係がない問題であり、位置、利用状況等からみても、照応原則に違反するものというべきである。したがって、右土地の譲与の申入れは、右土地評価の違法を治癒するものではない。

ロ 被控訴人は、暫定換地について次のとおり換地細則に違反している。

(ア) 従前地七四四番一は長大であり、換地細則九条により暫定換地の位置は、別紙図面三のとおりA部分はAの位置に、B部分はBの位置に、いわゆる原位置換地しなければならない。

しかるに、被控訴人は、換地細則九条から一五条までの暫定換地を誤り、A部分(路線価一六〇〇)及びB部分(路線価二〇七〇)をB部分より評価の低いA部分の位置に一括暫定換地して、権利評価指数を算出したので、減歩率の負担が増大し、換地地積は不当に減少した。

(イ) 暫定換地は換地細則九条により原位置で行うものであるから、被控訴人は、従前地七四六番一及び七四六番二について、原位置の角地(別紙図面三の赤線で囲まれた部分、路線価二一〇〇と二〇七〇)に暫定換地すべきなのに、そうしないで、原位置より評価の低い同図面の黒点線で囲まれた部分(路線価二〇七〇と二〇五〇)に暫定換地し、権利評価指数を算出したので、控訴人らの減歩率が増大した。

(なお、被控訴人は、後記のとおり、控訴人らが主張する原位置で暫定換地を組んだ場合には、かえって配当地積が減少すると主張するが、これは、被控訴人が暫定換地率の数値を誤ったことによるものであり、正しく計算すれば、配当地積は14.066平方メートルの増加となる(正面道路の適正奥行は二四メートルであるから、適用すべき暫定換地率は道路幅員一四メートル、奥行二四メートルの0.820であるのに、被控訴人はこれを奥行二〇メートルの0.791としている。また、被控訴人は、前記暫定換地計算の際には奥行を二二メートルとして計算しているのであるから、控訴人が主張する原位置で暫定換地を組む場合にも奥行を二二メートルとして計算すべきであり、そうすれば、配当地積は4.3平方メートル増加するのである。))。

(ウ) 原判決別紙物件目録六、七記載の土地(以下「従前地七六九番一、同番九」という。)は訴外高橋両名の所有であるが、被控訴人は、これを原位置(別紙図面四の赤線で囲まれた部分、路線価一五四〇と二〇七〇)に暫定換地すべきなのに、これより評価の高い角地(同図面の赤斜線の部分、路線価二一〇〇と二〇七〇)に暫定換地して権利評価指数を算出したため、減歩の負担が減少している。かかる行為は、換地細則九条、一〇条及び四条二項に違反し、控訴人らに対し著しい不利益な取扱いをするものであり、違法である(なお、被控訴人は、後記のとおり、控訴人らの主張する位置で暫定換地を組んだ場合、配当地積が23.65平方メートル増加すると主張するが、被控訴人はその計算に当たり奥行を二〇メートルと仮定しているところ、被控訴人は、前記暫定換地計算の際には奥行を一五メートルとして計算しているのであるから、右場合にも一五メートルで計算すべきである。奥行一五メートルで計算した場合、配当地積は10.89平方メートル減少するし、また、これを二〇メートルで計算しても、配当地積はわずかに2.07平方メートル増えるにすぎない。)。

ハ 被控訴人は、整理後の画地評価を誤り、次のとおり他の地権者の減歩を不当に軽減しているのに対し、控訴人らに不利益な処分をしている。

(ア) 井祐吉兵衛は、従前地七四八番を所有し、整理後は君津市久保一丁目一二番三の土地(以下「換地一二番三」という。)に換地され、鈴木菊治郎は、従前地(君津市久保字水神免七五五番)を所有し、整理後は君津市久保一丁目二番一の土地(以下「換地二番一」という。)に換地されたが、被控訴人は、右井祐の換地一二番三について、正背路線地であるにかかわらず、画地全部を正面路線価で計算せず、画地を二等分し、正面路線価二一〇〇及び背面路線価一五九〇により計算している(なお、被控訴人は、後記のとおり、控訴人らの主張するような方法により計算すれば、配当地積が7.85平方メートル増加すると主張するが、被控訴人は、右計算に当たり、従前地七四八番の奥行を三〇メートルと仮定しているところ、被控訴人は、前記換地計算の際には右奥行を一五メートルとして計算しているのであるから、右計算の際にも奥行を一五メートルとして計算すべきである。そうすれば、配当地積は32.73平方メートル減少する。また、被控訴人は、従前地七四六番一、同番二の奥行を二〇メートルと仮定して計算しているので、これらの従前地と隣接する従前地七四八番の奥行も二〇メートルで計算すべきであり、そうすれば、配当地積は8.55平方メートル減少する。)。

また、右鈴木の換地二番一についても同様に画地全部を正面路線価で計算せず、正面路線価二一一〇とこれより低い背面路線価一六〇〇に分けて計算している。このため、右井祐、右鈴木のそれぞれの整理後の平方メートル当たりの画地評価指数はそれぞれ一八五〇、一八七六と違法に低く、減歩が不当に軽減されている。

(イ) これに対し控訴人らの換地一番二〇は、正面路線価二〇七〇、背面路線、側面路線ともになく、奥行は、適正奥行二四メートルを超える三三メートルで、かつ不整形であるにもかかわらず、整理後の平方メートル当たりの画地評価指数は、右井祐、右鈴木を上回る一九六四である。

(ウ) 安藤武男は、従前地(君津市久保字水神免七四五番一、同番四、以下、それぞれ「従前地七四五番一」、「従前地七四五番四」という。)を所有し、整理後は従前地七四五番一については君津市久保一丁目一一番六の土地(以下「換地一一番六」という。)に、従前地七四五番四については同市久保一丁目一一番五(以下「換地一一番五」という。)にそれぞれ換地されたが、被控訴人は、換地一一番五について、換地細則二三条一項ただし書によって換地一一番六と合筆計算し正面路線価二〇七〇で評価しなければならないのに、側面路線価一五九〇で評価計算しているため、平方メートル当たりの画地評価指数が一六二〇と違法に低く、減歩が不当に軽減されている。

(エ) 小松春治は、従前地(君津市久保字水神免七五二番(以下「従前地七五二番」という。)等)を所有し、整理後は君津市久保一丁目一二番六の土地(以下「換地一二番六」という。)、同番五の土地(以下「換地一二番五」という。)に換地されたが、被控訴人は、換地一二番六について、換地細則二三条一項ただし書によって換地一二番五と合筆計算し路線価二〇七〇で評価しなければならないのに、側面路線価一五九〇で評価計算しているため、平方メートル当たりの画地評価指数は一六一七と違法に低く、減歩が不当に軽減されている。

(オ) 控訴人らの従前地七四一番一は鉄道への接近を理由にして評価を低く修正しているが、これに対する換地一番二〇はいっそう鉄道に近づいたのであるから、被控訴人は、当然評価を低く修正しなければならないのに、これをしていない。

③ 控訴人らの従前地七四一番一、同七四六番三及び従前地七四六番一、同七四六番二は、既成宅地であって、何ら工事は行われていないのであるから、工事費用を負担するいわれはなく保留地減歩をする必要がないにもかかわらず、その保留地減歩率は、被控訴人平均が14.464パーセントであるに対し、従前地七四一番一、同七四六番三の合計が20.49パーセント、従前地七四六番一、同七四六番二の合計が18.57パーセントと過重であり、違法である。

(二) 工事未了の違法について

(1) 換地処分は、換地計画に係る区域の全部について土地区画整理事業の工事が完了した後においてすることができる(法一〇三条二項本文)。

ここで工事とは、公共施設の新設又は変更の工事、宅地の区画形質変更の工事、法七六条違反工作物の移転除却工事、法七七条の建築物の移転除却工事のことである。

ただし、定款に別段の定めがある場合においては、換地計画に係る区域の全部について工事が完了する以前においても換地処分をすることができる(法一〇三条二項ただし書)。

被控訴人の定款六九条は「この組合の換地処分は、法七七条の規定による建築物等の移転又は除却が完了した場合においては、その他の工事が完了しない以前においても、法一〇三条二項の規定により行うことができる」としている。

(2) 右の法七七条の規定による建築物の移転又は除却とは、本件に即していえば、従前地七四一番一に存した建築物を換地一番二〇に、従前地七四四番一に存した建築物を換地一番八に移転することである。

しかるに、被控訴人は、建築物を移転又は除却すべき義務を履行せず、法七七条二項の通知を怠り、自ら建物移転工事の未了を招いたので、原判決別表一、二記載の換地処分は、法一〇三条二項、定款六九条に違反した違法なものである。

被控訴人は、控訴人らに建物移転を拒絶されたので移転ができなかった旨主張するが、被控訴人は法七七条の照会通知を全くしていないのであるから、被控訴人に移転通知の権限が生じるはずはなく、その被控訴人が建物移転の申入れを行うことは不可能であり、したがって、控訴人らがこれを拒絶することもあり得ず、また、その事実もない。

(三) 土地評価の違法について

土地の評価は換地設計及び換地清算のために行われるが、被控訴人は、以下のとおり控訴人らの宅地の評価を誤ったので、換地設計を誤り、控訴人らに違法な換地を指定した。

(1) 整理前画地評価の誤りについて

① 従前地七四四番一の画地評価の誤り

前記(一)、(5)、②、イ、(ア)のとおりである。

② 奥行修正の適用違反

前記(一)、(5)、②、イ、(イ)、のとおりである。

③ 三角地修正の適用違反

前記(一)、(5)、②、イ、(イ)、のとおりである。

④ 高低差修正の適用違反

前記(一)、(5)、②、イ、(イ)、のとおりである。

⑤ 従前地七四一番一の画地評価の不正

前記(一)、(5)、②、イ、(ウ)のとおりである。

⑥ 従前地七四六番二の画地評価の誤り

従前地七四六番二は、整理前において二方公道に接していたのに、画地評価計算においては、これを盲地(無道路地)としているため、評価指数が違法に低くされている。

⑦ 従前地七四六番三の画地評価の誤り

前記(一)、(5)、②、イ、(エ)のとおりである。

(2) 暫定換地の誤り

① 従前地七四四番一の暫定換地

前記(一)、(5)、②、ロ、(ア)のとおりである。

② 従前地七四六番一、同番二の暫定換地

前記(一)、(5)、②、ロ、(イ)のとおりである。

③ 訴外高橋両名の従前地七六九番一、同番九の暫定換地

前記(一)、(5)、②、ロ、(ウ)のとおりである。

(3) 整理後の画地評価の誤り

① 井祐吉兵衛の換地一二番三及び鈴木菊治郎の換地二番一

前記(一)、(5)、②、ハ、(ア)、(イ)のとおりである。

② 安藤武男の換地一一番五及び小松春治の換地一二番六

前記(一)、(5)、②、ハ、(ウ)及び(エ)のとおりである。

③ 鉄道修正の適用違反

前記(一)、(5)、②、ハ、(オ)のとおりである。

なお、仮に換地一番八が接する区画整理道路についてマイナス0.1の鉄道接近の減点をしているとしても、この道路に面しているものは換地一番八のみであるから、結局、換地一番八、換地一番一八、換地一番二〇の三つの換地のうち、鉄道接近による減額がされているのは、換地一番八のみということになる(換地一番二〇はいっそう鉄道に接近したにもかかわらずである。)が、換地一番八に対応する従前地は従前地七四四番一の東側半分のみであるのに、従前地では、従前地七四四番一と従前地七四一番一の双方の地積全部について右減額がされているのであり、しかも、従前地七四四番一と換地一番八の減価の割合をみると、換地一番八の減価割合は、従前地七四四番一のそれに比して不当に低いといわざるを得ない。

(4) 路線価計算の誤り

換地一番一八、換地一番一九、換地一番二〇の西側の街路六―Eは整理前に比較して二メートルの歩道が付けられたのみで、交通量の目安となる車道幅員の変化はないのであるから、道路の交通上の性格、系統性、連続性はほとんど不変であり、土地の価値に及ぼす影響は極小である。しかるに、被控訴人は、その街路係数を1.5から4.1に上げたが、これは到底許されない。

(5) 被控訴人は、右(1)ないし(4)のとおり控訴人らの宅地評価を誤ったので、換地清算金を低額とした。

4  原判決別表三1記載の換地処分(保留地の設定)のうち原判決別紙図面三のイ、ロ、ハ、ニ、イの各点を順次直線で結んだ部分の換地処分(保留地の設定)及び同別表三2記載の換地処分(保留地の設定)は、以下の点で違法であり、かつ、控訴人郁次郎、同淳子の原判決別紙物件目録記載の各土地の所有権を侵害しているので、取り消されるべきである。

(一) 原判決別表三1記載の保留地の設定について

(1) 法違反ないし必要性のないこと

① 広大な保留地を設けるものであって、違法である。

② 組合施行の保留地の設定は、土地区画整理事業の施行の費用に充てるため、又は定款で定める目的のためすることができる(法九六条一項)。

ところが、費用に充てるためには、右のような広大な保留地を定める必要はなく、また、この保留地について、定款では定めていない。

(2) 同別表三1記載の保留地の設定についての手続違反

① 同別表三1記載の君津市久保一丁目一番宅地9668.80平方メートル(保留地)は、当初の事業計画には予定されていなかったのに、右保留地が設定された。

② 右保留地の設定に当たって、法定の事業計画の変更手続(法三九条)及び換地計画の変更手続がなされなければならない。右変更手続には、総代会の議決を経なければならない(法三六条三項、三一条二号、七号)のに、かかる事実はない。

(二) 同別表三2記載の保留地の設定について

この保留地は付け保留地と称されるべきもので、単独では何の利用価値のない間口最狭小、奥行超長大である。

これは、控訴人郁次郎、同淳子の従前地七四四番一、その換地一番八を削るためにのみ設定されたもので違法である。

5  訴外高橋両名に対する換地処分について

被控訴人の訴外高橋両名に対する原判決別表四記載の換地処分は、旧国鉄内房線の南側にあった従前地七六九番一と同線の北にあった従前地七六九番九とを集合換地した上、飛換地としたものであるが、これは照応の原則に違反し、この換地処分の違法が同別表一、二記載の違法な換地処分を招来させ、控訴人郁次郎、同淳子の原判決別紙物件目録記載の各土地の所有権を侵害しているので、取り消されるべきである。

よって、控訴人郁次郎、同淳子は、主位的に従前地七四四番一、同七四六番一、同七四六番二の各土地についての各換地処分、原判決別表三1記載の換地処分(保留地の設定)のうち原判決別紙図面三のイ、ロ、ハ、ニ、イの各点を順次直線で結んだ部分の換地処分(保留地の設定)及び同別表三2記載の換地処分(保留地の設定)並びに従前地七六九番一、同七六九番九の各土地についての各換地処分の各取消しを、予備的に同別表二記載の各換地処分のうち清算金処分の部分の取消しをそれぞれ求め、控訴人郁次郎、同晃は、主位的に従前地七四一番一、同七四六番三の各土地についての各換地処分の取消しを、予備的に同別表一記載の各換地処分のうち清算金処分の部分の取消しをそれぞれ求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1及び2の事実は、認める。

2  同3ないし5は、いずれも争う。

三  本案前の主張

1  被控訴人の本案前の主張

(一) 主位的請求の趣旨(一)(2)の換地処分(保留地の設定)の取消しの訴えについて

(1) 控訴人郁次郎、同淳子は、土地区画整理法(以下「法」という。)九六条の規定による保留地の設定行為(換地処分)が抗告訴訟の対象となる行政処分であるとして、原判決別表三1記載の保留地の設定のうち、控訴人郁次郎、同淳子の従前の土地部分及び同2記載の保留地の設定について、その取消しを訴求している。

(2) しかし、保留地の設定行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分ということはできない。すなわち、抗告訴訟の対象となる行政処分というためには、行政庁の公権力の行使により直接国民の権利義務に変動を生ぜしめるようなものでなければならないところ、被控訴人が法所定の手続により換地計画において保留地を定め、千葉県知事の認可を受けて、法一〇四条九項の規定(ただし、昭和六三年法律第六三号による改正前のもの、以下同じ。)により換地処分の公告の日である昭和五七年六月二五日の翌日保留地の所有権を取得したとしても、この保留地の設定自体により、直接、控訴人郁次郎、同淳子が共有していた従前地の所有権が侵害されたということはできない。仮に行政処分性があるとしても、控訴人郁次郎、同淳子が従前地の所有権を失ったのは次項のとおり換地処分によるものであるから、保留地の設定の取消しを求める利益を有しない。したがって、これらの保留地の設定の取消しを求める訴えは不適法である。

(3) 原判決別表三1記載の保留地の設定について

控訴人郁次郎、同淳子が従前地七四六番一、同番二の土地の所有権を失ったのは、被控訴人が換地計画において控訴人郁次郎、同淳子が共有する右従前地に対して原判決別表三1記載の保留地を設定したことによるものではなく、被控訴人が右従前地に対応する換地処分を行ったことによるものである。

このことは、仮に右保留地の設定が取り消されたとしても、控訴人郁次郎、同淳子に対する換地処分が取り消されない限り、控訴人郁次郎、同淳子が右従前地の所有権を回復することがないことに照らして明らかである。

そして、控訴人郁次郎、同淳子は、本訴において、右従前地に対応する換地処分の取消しを訴求しており、当該換地処分につき取消判決が確定した場合には、控訴人郁次郎、同淳子は、従前地七四六番一、同番二の土地所有権を回復することができるし、また、被控訴人は、この取消判決に拘束される(行政事件訴訟法三二条、三三条)ので、右従前地になされた保留地の設定を取り消した上、改めて、控訴人郁次郎、同淳子の従前地に対応する換地処分をしなければならないからである。

したがって、控訴人郁次郎、同淳子が保留地の設定行為の取消しを併せて求めておかなければ、従前地の所有権を回復することが不能になるということはないものと考えられる。

よって、右保留地の設定の取消訴訟は不適法である。

(4) 原判決別表三2記載の保留地の設定について

保留地の設定行為が抗告訴訟の対象になる行政処分であるとしても、控訴人郁次郎、同淳子は、原判決別表三2記載の保留地の従前地の所有者ではないので、この保留地の設定により何らの権利、利益を害されていないから、当該保留地の設定の取消しを訴求する利益(原告適格)を有しない。

(二) 主位的請求の趣旨(一)(3)の訴外高橋両名に対する換地処分取消しの訴えについて

控訴人郁次郎、同淳子は、被控訴人が控訴人郁次郎、同淳子の従前地を訴外高橋両名に換地処分したことにより、従前地の所有権を侵害されたので、当該換地処分の取消しを訴求する利益があると主張している。しかし、既に述べたとおり、控訴人郁次郎、同淳子が従前地の所有権を失ったのは、被控訴人が控訴人郁次郎、同淳子の従前地に対応する換地処分を行ったことによるものであり、訴外高橋両名に対する換地処分に基づくものではない。

仮に訴外高橋両名に対する換地処分が取り消されたとしても、控訴人郁次郎、同淳子の換地処分が取り消されない限り、控訴人郁次郎、同淳子が従前地の所有権を回復するということはあり得ない。よって、控訴人郁次郎、同淳子は訴外高橋両名に対する換地処分の取消しを訴求する利益を欠くので、右訴えも不適法である。

2  被控訴人の本案前の主張に対する控訴人らの反論

(一) 保留地の設定について

(1) 保留地の設定は、従前地が全く存在しないのに、この処分により新たに土地が被控訴人のために創設されるものであるから、最も典型的な行政処分といえる。抗告訴訟の対象となる処分性は十分である。なお、保留地の設定は、保留地を設定された従前地の所有者からその所有権を奪うものであるから、保留地の設定の通知がなくても行政処分性は失われないというべきであり、換地処分の公告の日をもって行政処分が行われたと解すべきである。

(2) 原判決別表三12の保留地は、控訴人郁次郎、同淳子の従前地の所在地であり、控訴人郁次郎、同淳子に対する換地処分が取り消されれば、控訴人郁次郎、同淳子に換地として交付されるべき土地である。

控訴人郁次郎、同淳子に対する換地処分は右保留地の所在地である控訴人郁次郎、同淳子の従前地を奪うことにある。換言すれば、控訴人郁次郎、同淳子に対する原判決別表二記載の換地処分と同別表三1記載の保留地の設定とは表裏の関係にある。

そうすると、控訴人郁次郎、同淳子に対する換地処分の取消しと保留地の設定の取消しとを同時に求めなければ、控訴人らは、本件取消訴訟の目的を達し得ないのである。

(3) 被控訴人は、その結論の理由として「取消判決の効力は第三者にも及ぶし、また、被控訴人はこの取消判決に拘束される」とする。被控訴人が取消判決に拘束されることは認めるが、取消判決がなされるころには、保留地を譲り受けた第三者が建物(それも高層に近い)を建て終わっていよう。その場合にその第三者が控訴人郁次郎、同淳子に対する換地処分の取消判決の効力を受けるとは考えられないし、被控訴人が現実に保留地の設定及びその譲渡処分を取り消すことは不可能である。

(4) よって、現時点において、控訴人郁次郎、同淳子に対する換地処分の取消しを求めると同時に保留地の設定の取消しを求めておく利益があり、控訴人郁次郎、同淳子には原告適格がある。

(二) 訴外高橋両名に対する換地処分の取消しについて

(1) 原判決別表四の換地処分の換地は、控訴人郁次郎、同淳子所有の従前地七四六番一の所在地であり、控訴人郁次郎、同淳子に対する換地処分が取り消されれば、控訴人郁次郎、同淳子に換地として交付されるべき土地である。

(2) 控訴人郁次郎、同淳子に対する換地処分は訴外高橋両名に対する換地処分の換地の所在地である控訴人郁次郎、同淳子の従前地を奪うことにある。換言すれば、控訴人郁次郎、同淳子に対する従前地七四六番一についての換地と原判決別表四記載の訴外高橋両名に対する換地処分とは表裏の関係にある。

(3) したがって、控訴人郁次郎、同淳子に対する換地処分の取消しと訴外高橋両名に対する換地処分の取消しとを同時に求めなければ、控訴人郁次郎、同淳子は本件取消訴訟の目的を達し得ないのである。

よって、控訴人郁次郎、同淳子には優に原告適格がある。

四  被控訴人の主張

1  請求原因3の原判決別表一、二の換地処分について

(一) (一)の法八九条の照応原則違反について

(1) (1)の従前地七四一番一、換地一番二〇について

① ①について

一五―一街区は北を旧国鉄内房線、西を県道君津・大貫線(以下「本件県道」という。)によって画されているという特殊性があり、また、もし原判決別紙図面五記載の一六街区と一七街区の間の区画整理道路を一五―一街区の間に設置するとすると、その道路用地として四〇〇平方メートル以上の土地を確保する必要があり、その土地は控訴人ら施行地区内の関係者全員が負担することとなり、さらに同街区内の控訴人ら以外の画地がしわ寄せを受けて他の街区に飛換地させられて控訴人ら以外の権利者にとって照応原則に反することになるおそれがある。加えて、一五―一街区をこのまま維持しても、控訴人ら所有の各従前地とそれに対する各換地を比較した場合その利用状況が悪くなったことは認められないので、一五―一街区の換地設計は適法である。

② ②について

従前地七四一番一の土地は、西側の全部が直接本件県道に接続していたわけではなく、その一部分は幅1.2メートルのいわゆる里道に接していたものであり、この里道と本件県道との間には従前地七四六番三(田二〇平方メートル)が介在していた。したがって、従前地七四一番一の西側のうち本件県道に接する部分は二か所に分かれており、その間口は一三メートルと四メートルであったところ、換地一番二〇は、本件県道に接する間口が23.668メートルとなったのであるから、道路法の適用がある公道に接する間口の長さの比較においては、換地一番二〇の方が長いのでこれにより利用価値が増している。よって、控訴人らの主張は理由がない。

③ ③について

換地細則一六条は換地を割り込む場合の基本原則を定めたものであって、既設の県道、都市計画道路等に面して換地を割り込まざるを得ないような特段の事情がある場合には、この規定を適用することができない。このような事情がある場合には、これらの道路に接する当該街区の各換地ができるだけ不整形にならないように配慮して換地の割り込みを行って関係権利者間の土地利用の公平を図る必要がある。本件では、換地一番二〇が接する本件県道は北方が旧国鉄内房線を横断し、君津市坂田を経て国道一六号線に、また、南方が都市計画道路三・三・四号線に達する連続性がある道路であるから、本件県道を一五―一街区と直角に交わるように変更することは極めて困難であり、また、仮に換地一番二〇と直角になるように割り込みをすれば、控訴人ら以外の権利者の換地が全て不整形な画地となり、利用価値が減少することになるのであるから、換地細則一六条二項の規定によらなかったとしても、違法ではないというべきである。

次に、東側の背割線がカギ型になっていて不整形との点については、確かに換地一番二〇の東側の背割線がカギ型になっているが、換地一番二〇に隣接する東側及び南側の各換地は、いずれも控訴人らの換地であり、控訴人らはこれらの換地を一体に利用できるので、右カギ型になったことにより利用価値が低くなったということはできないから、照応原則違反にはならない(なお、控訴人郁次郎は、土地区画整理事業の工事概成後に従前地七四一番一の土地の持分を控訴人晃に贈与しているが、工事概成後になされた権利の変動は照応の原則上配慮する必要がない。)。

④ ④について

従前地七四一番一は、かって地目が田であり、昭和四三年頃控訴人郁次郎がその一部を埋め立て建物を建てたのであるが、建物を建てる部分以外の土地(二四三平方メートル)は埋め立ても整地もしていなかったので、換地細則三三条により右二四三平方メートルを除いたその余の宅地について評価の一〇パーセント増しをしたものであり、適法である。

仮に右主張が認められないとしても、被控訴人は、平成四年四月一四日到達の書面をもって控訴人郁次郎、同晃に対し、従前地七四一番一と従前地七四六番三の未整地部分が整地されていた場合の配当地積の増加分である合計5.67平方メートル(従前地七四一番一の増加分は5.24平方メートル)に見合うものとして、自己所有の付け保留地7.53平方メートルを無償譲与する旨申し入れた。

ところが、同人らにおいて右申入れに応じなかったので、被控訴人は、法九四条及び定款七〇条に定められている清算金規定に準拠して、〈書証番号略〉の一記載の「清算金の計算書」記載のとおり計算した清算金を追加して支払う旨の行政処分を行い、平成四年四月二八日に行われた当審第三〇回口頭弁論期日においてこれを控訴人郁次郎、同晃に対し通知した。

よって、右瑕疵は治癒されたというべきであり、仮に右行政処分が無効であるとしても、右無償譲与は維持するので、右瑕疵は治癒された。仮に右主張がいずれも認められないとしても、控訴人郁次郎、同晃は、右無償譲与あるいは右行政処分(あるいは清算金追加相当額の贈与の申入れ)に応じることにより利益を受けることはあっても何らの不利益を受けることはないのであるから、これに応じないで瑕疵の主張をするのは権利濫用ないし信義則違反に当たり許されない。

⑤ ⑤について

控訴人らは、従前地七四一番一、従前地七四六番三の実質地先負担地積は83.01平方メートルであるから、別表1記載のとおり、実質公共減歩地積は59.79平方メートルの増換地とならねばならないと主張するが、控訴人らの地先負担地積(公共減歩地積)の計算方法は誤っており、正しく計算すれば、別表2記載のとおりであるから、右主張は失当である。また、控訴人らは、換地一番二〇及び換地一番一九は既成宅地であり、宅地の利用増進は皆無であるから、保留地減歩は一切不要であると主張するが、里道がなくなり、土地の区画形質が整形化され、周辺の道路が整備されて、宅地の利用増進が図られたことは明らかであるから、右主張も理由がない。

⑥ ⑥について

原判決別紙図面四記載のとおり、従前地七四一番一と従前地七四四番一上には、控訴人郁次郎所有の建物が合計一二棟あり、そのうち五棟が従前地七四一番一上に、六棟が従前地七四四番一上に、一棟が両土地の境界線上に建っていた。

被控訴人は、従前地七四六番一、同番二については、従前地七四一番一及び従前地七四六番三が存在していた位置に換地することになったので、昭和四九年六月仮換地の変更指定をしたとき、右一二棟の建物のうち七棟を〈書証番号略〉のとおり換地一番二〇及び換地一番八上に被控訴人の費用で移転することを計画し、控訴人郁次郎に対し、再三にわたり建物移転のための家屋立ち入り調査の協力を申し入れたが、同人はこれに応じず、建物の移転を拒絶したため、右建物移転計画は取り止めざるを得なかった。

右移転計画を実行しておれば、従前地七四一番一上の建物については、従前と同様に貸家として利用できたのであるから、換地一番二〇の一棟半しか乗らなくても照応原則に違反しない(なお、控訴人郁次郎は、被控訴人から右申し入れを受けた後である昭和五四年八月三日、従前地七四一番一及び従前地七四六番三の共有持分の五五分の一を控訴人晃に、また、同日、従前地七四六番一、同番二の共有持分一〇〇分の一を控訴人淳子に、さらに、昭和五四年五月三〇日、従前地七四一番一の共有持分六〇分の一を控訴人淳子に、それぞれ贈与しているが、このような場合には、照応原則の適用上は、控訴人らの従前地が同一人の所有に属するものと同視すべきであるし、また照応原則の基準時は土地区画整理事業の認可時(事業開始時)であることからいっても、右共有持分の変動を考慮しなくても違法ではない。)。

(2) (2)の従前地七四六番三、換地一番一九について

前記のとおり、従前地七四六番三は、里道と県道に挾まれた二〇平方メートルの土地である。そこで、被控訴人は、従前地七四六番三を従前地七四一番一と一体として利用してきたものとして従前地の評価計算をし、かつ、換地一番二〇と換地一番一九が一体として利用され利用増進が図られるものとして換地処分を行っているものであるから、換地一番一九の奥行が長いからといって照応原則に違反することはない。

(3) (3)の従前地七四四番一、換地一番八について

① ①について

従前地七四四番一の東側及び西側の道路というのは、いわゆる里道であり、その幅員は1.2メートルにすぎなかった上、東北側の間口13.5メートルが幅員六メートルの市道に面していたにすぎない。ところが、換地一番八は、東側15.52メートルが区画整理道路に面することとなり、また、形状も整形化されたので、利用増進が図られている。したがって、土地区画整理前後の間口を比較して、照応原則に違反しているということはできない。

② ②について

前記のとおり、控訴人郁次郎は建物の移転を拒絶したため、これができなかったものであり、〈書証番号略〉記載のとおり、建物を移転すれば、従前地と換地の利用価値に差がないから、換地一番八上に六棟のうち三棟が乗らなかったとしても、照応原則に違反しない。

なお、控訴人らは、〈書証番号略〉の移転計画では、出入口の前面が隣地との境界線に接する建物が生じるため、これらの建物は換地一番九の保留地を通らないと出入りができなくなると主張する。

しかし、この保留地は、付け保留地といわれるものであり、建物の移転又は除却をすることなく、従来と同様に建物を利用できるようにすることを目的として設けられたものであって、控訴人らはこれを買い受けることにより右目的を達成することができ、右買い受けの際には右保留地の売買代金から建物の移転又は除却に要する費用相当額が差し引かれるので、控訴人らはこれを買い受けることによって利益になっても不利益になることはない。したがって、控訴人らの右主張も理由がない。

(4) (4)の従前地七四六番一、同番二、換地一番一八について

① ①について

前記のとおり、従前地七四一番一及び従前地七四六番三の各土地が存在していた位置に従前地七四六番一、同番二の換地を定めたので、被控訴人は、従前地七四一番一及び従前地七四六番三上の建物を移転する計画を立て、その旨控訴人郁次郎に申し入れたが、同人がこれを拒絶したため、従前地七四六番一、同番二の換地である換地一番一八を更地にすることができなかったものであるから、照応原則に違反することはない。

また、控訴人淳子は、前記のとおり、従前地七四六番一、同番二の共有持分一〇〇分の一の贈与を受けその旨の所有権移転登記をしているが、これは、被控訴人の建物の移転を困難にする意図でなされたものと窺われるので、換地一番一八上に建物が存在することを違法事由として主張するのは権利濫用である。

さらに、照応原則の基準時後の右権利変動を考慮しなくても照応原則に違反しない。

② ②について

換地一番一八の割り込みが本件県道に対し直角になっていないとしても、前記のとおり、照応原則に違反しない。

③ ③について

土地区画整理事業において公共減歩及び保留地減歩は避けられないことであって、土地区画整理事業の施行地区内の土地は、事業施行によってもたらされる利用増進の度合いに応じて減歩を負担すべきところ、控訴人らの従前地についても、土地の区画形質の変更が行われ、従前存在していた里道がなくなり、周辺の道路が整備されたことによって、土地の利用価値が著しく増進しているのであるし、また、控訴人らの従前地七四六番一、同番二の減歩率25.37パーセント(公共減歩率13.91パーセント、保留地減歩率11.46パーセント)は被控訴人の平均減歩率29.94パーセントと対比して特に高いということはできないから、照応原則に違反しない。

(5) (5)の各換地が従前地と照応していない旨の主張について

① ①について

従前地七四六番一、同番二が換地一番一八に飛換地されたのは、換地細則四条一項(3)(同一所有者の換地をまとめて交付するときには移動換地することができる。)によったものであり、飛換地になったとしても、他の換地と一体利用ができるようになり、利用の増進が図られているものであるし、また、換地一番一八が更地にならなかったのは、前記のとおり、控訴人郁次郎が建物の移転を拒絶したことによるものであるから、照応原則に違反しない。

さらに、控訴人らの各従前地と各換地は、総合的に勘案した場合、大体同一条件にあるので照応原則に違反しない。

② ②の平等原則違反(故意に不利益な処分をした旨の主張)について

イ イの控訴人らの従前地の評価を不当に低めて減歩率を増大した旨の主張について

(ア) (ア)の従前地七四四番一について

従前地七四四番一をA部分とB部分に区分し、B部分は従前地七四一番一と接続した同一所有者のものとして評価計算すべきであるとの点については、本件土地区画整理事業の施行地区は新開発地区であり、大部分の土地が農地であり、耕地整理がされていなかったため、いわゆる法定外公共道路に面する不整形の土地が多かったので、被控訴人は、整理前の土地の評価をするに当たり、不整形による修正を行わなかったことから、合筆計算も行わなかったものであり、そこで、従前地七四四番一、従前地七四一番一、従前地七四六番三を一体とみた場合不整形の土地となるけれども、他の土地の評価との均衡上、換地細則三七条により合筆計算しなかったものである。

B部分について路線価の低い街路番号一八―Bの路線価七三〇を採用したとの点については、そのような事実はない。路線価七三〇の街路というのは、従前地七四四番一の背面道路のことであり、控訴人らに対し、他の権利者と比較して不利益を与えていることはない。

従前地七四四番一をA部分とB部分に分けて、B部分は路線価九六〇により評価し、袋地計算すべきであるとの点については、仮に右のような計算をするのであれば、B部分は従前地七四一番一の一部を私有道路として利用して県道に接続しているものとみるべきであるから、その部分約八〇平方メートルは、私有道路として路線価を設定し評価すべきことになるところ、換地細則三一条により、私有道路については、その私有道路に付した路線価の三〇パーセントの指数で評価することになっているので、従前地七四一番一の権利評価指数、配当地積がそれだけ減少することになる。したがって、仮に右のような計算をしても、控訴人らの従前地の権利評価指数、配当地積にほとんど差異は生じないのである(〈書証番号略〉別紙A参照、なお、換地細則には角地の評価規定を欠いていたが、被控訴人は、角地の評価については、一般に折衷式換地計算法で採用されている計算方法、すなわち、「角地の評価は、普通地として評価した画地の評価指数に側方加算指数を加えて評価するものとする。側方加算指数は、側方道路の加算地積及び負担地積に側方路線価指数を乗じた積とする。」という計算式により算定したものである。もとより、右評価については、総代会の承認を得た適法なものである。)。

(イ) (イ)の控訴人ら以外の者に対する整理前評価は故意に不公平に取り扱うものである旨の主張について

の奥行修正の誤りについて

前記小倉の従前地七四三番につき誤って奥行修正していないこと、従前地七四一番一及び七四六番一、二につき奥行修正していることは事実であるが、これらの従前地の奥行修正は適正になされているので、右小倉についての評価計算の誤りはこれらの従前地についての換地処分を取り消さなければならない程の瑕疵ということはできない。

の三角地修正の誤りについて

前記のとおり、被控訴人は、整理前の各土地について不整形修正をしなかったことから、それとの均衡上、三角地についても評価の修正をしなかったものである(換地細則三七条)。そして、三角地修正は、換地にのみ行い、整理前の現況が宅地であったものについては、一〇パーセント増しの評価をしたものである。したがって、施行地区内の整理前の土地全部について三角地修正をしなかったのであるから、不公平が生じることはない。

の高低差修正の誤りについて

前記小倉、坂本、伊藤、井祐、安藤、小松、小林の各従前地について高低差修正していないことは認めるが、これらの者の土地については、整理前ではなく、整理後の換地計算の際に、配当を受けるべき換地の評価指数に高低差修正をしているのであって、被控訴人がこのような方法を採用したからといって、控訴人らと他の権利者との間に著しい不公平が生じたということはできない。

(ウ) (ウ)の従前地七四一番一の画地評価の不正について

前記(一)、(1)、④のとおりである。

(エ) (エ)の従前地七四六番三の画地評価の不正について

従前地七四六番三は、事業開始時には未整地であったので、右主張は当たらない。

仮に右土地が宅地であったとして評価計算をしても、配当地積が0.43平方メートル増えるにすぎず(〈書証番号略〉別紙B参照)、前記(一)、(1)、④に主張のとおり、瑕疵は治癒されたか、そうでないとしても、控訴人らは、瑕疵の主張をすることができない。

ロ ロの暫定換地についての換地細則違反の主張について

(ア) (ア)の従前地七四四番一の暫定換地について

控訴人らは、別紙図面三記載のとおり、A部分はAの位置に、B部分はBの位置に原位置換地すべきであると主張するが、その理由が不明であるのみならず、A部分とB部分の中間の土地はどこに換地するのか明らかではないし、また、B部分のうち県道に面している土地には伊藤昌一の従前地七四五番二(田一二〇平方メートル)が存在しているのであるから、二重に暫定換地をすることになって不合理であるなど、右主張は理由がない。

(イ) (イ)の従前地七四六番一、同番二の暫定換地について

被控訴人は、従前地七四六番一、同番二が存在していた原判決別紙図面二記載の一四街区に集合保留地を設けたため、この集合保留地内にあった整理前の土地については、飛換地せざるを得なくなり、また、原位置には土地区画整理事業で新設される道路が全く存在しないため、原位置又はその付近では適正な暫定換地を算定することができない状況であったので、換地細則三七条により、実際に換地を交付する位置において暫定換地を計算したものであり(したがって、暫定換地の計算は、施行地区内の土地全てについて実際に換地を交付する位置において行っている。)、何ら違法はない。

また、従前地七四六番一、同番二につき、控訴人ら主張の原位置において暫定換地を計算しても、配当地積は、かえって6.21平方メートル減少するのであるから(〈書証番号略〉別紙C―(1)参照)、減歩率が増大したという非難は失当である(なお、控訴人らは、暫定換地を原位置にする場合と換地にする場合とで配当地積に差があるというのであれば、奥行を一定にして計算すべきであると主張するようであるが、原位置で計算する場合には、換地設計上道路を設置する予定になっていないので、道路が存在するものとして、仮定の奥行、道路幅員を想定しなければならないことは当然であり、右主張は理由がない。)。

(ウ) (ウ)の訴外高橋両名の従前地七六九番一、同番九の暫定換地について

控訴人らの主張する位置において暫定換地を計算した場合、訴外高橋両名の配当地積は、かえって、23.65平方メートル増加するのであるから(〈書証番号略〉別紙C―(2)参照)、減歩率が減少したという非難は失当である。

ハ ハの整理後の画地評価の誤りの主張について

(ア) (ア)の井祐吉兵衛、鈴木菊治郎の従前地に対する各換地の画地評価について

右井祐、鈴木の各換地については、正背道路間の奥行が適正奥行二四メートルを超えていたところ、換地細則二九条は「正背道路間が適正奥行以上の場合、二宅地とみなしそれぞれ評価する。」と規定しているところから、利用範囲を想定して、正面路線から評価する領域と背面路線から評価する領域に分割して評価したものであり、何ら違法はない。

また、仮に控訴人らが主張するような方法により計算すると、配当地積は、右井祐については7.85平方メートル、右鈴木については11.14平方メートルそれぞれ増加することになるから(〈書証番号略〉別紙D―(1)(2)参照)、同人らの減歩が不当に軽減されているということはない。

(イ) (イ)の換地一番二〇について

控訴人らは、換地一番二〇の平方メートル当たり指数を右井祐、鈴木の各換地の平方メートル当たり指数と比較して不利益であると主張するが、従前地の権利評価指数の低い土地につき、換地の評価指数がこれよりも高いところに換地されるとすれば、減歩率が高くなるし、その逆の場合には、減歩率が低くなるのであって、換地の平方メートル当たりの評価指数だけを比較して不公平かどうかを判断することはできないところ、右井祐、鈴木の減歩率は、それぞれ39.83パーセント、30.42パーセントであるに対し、控訴人らの減歩率は、換地一番八が18.55パーセント、換地一番一九及び同番二〇が20.52パーセント、換地一番一八が25.37パーセントであるから、右井祐、鈴木の減歩率が不当に軽減されていることはない。

(ウ) (ウ)の安藤武男の換地について

右安藤の従前地(久保字水神免七四五番四及び同番一、以下それぞれ「従前地七四五番四、従前地七四五番一」という。)は、いずれも原判決別紙図面二記載の一四街区の集合保留地内にあったため飛換地をせざるを得なかったので、従前地七四五番四を換地一一番五に、従前地七四五番一を換地一一番六にそれぞれ換地の割り込みをしたものである。

元来、換地は一筆ごとに一画地を交付するのが原則であるから、これらの従前地について、既に正面路線価により街区評価がしてあった街区の中にそれぞれの換地を割り込んだのであり、一括換地をしたものではなく、このような場合には、右二筆の換地を合筆計算しなくても、控訴人らの換地と比較して著しく不公平であるということはできない。

(エ) (エ)の小松春治の換地について

小松春治は、従前地として、従前地七五二番、従前地七六八番ほか一筆を前記一四街区の集合保留地内に所有していたため、飛換地をせざるを得ず、従前地七五二番については、三か所に分割して換地を指定しなければならなくなり、その一部が換地一二番六に換地され、その余の換地はほかの街区に指定されている。そして、従前地七六八番の換地が換地一二番五に指定されたものである。このように特別の事情があるときは、換地一二番五、同番六を一括換地と同様に一体評価しなかったとしても、控訴人らの換地と比較して著しく不公平であるということはできない。

なお、右小松は、換地一二番五について減歩率が45.7パーセント、換地一二番六について減歩率が34.5パーセントとなっており、平均減歩率29.94パーセントより減歩率が高くなっている。

(オ) (オ)の鉄道接近修正の主張について

換地一番二〇の正面路線6―Eの路線価指数に鉄道接近係数の修正が行われていないが、これは右路線の中間点から鉄道沿線までの距離が右修正を要するとされている五〇メートルを超えていたためである。

これに対し、従前地七四一番一について右修正をしたのは、一般に接近係数は路線の中間点から対象施設までの距離により計算されるところ、従前地の大部分が延長距離の長い里道に面していたため、その中間点から鉄道沿線までの距離が右五〇メートルを超えることになり、適正な鉄道接近係数を算定することができなかったので、従前地については、各従前地の中心点から鉄道沿線までの影響距離により右係数を算定することにしたことによるものである(整理後の場合には、道路の新設、変更がなされ、街区(画地)に接する道路ごとに路線価を付すこととなるので、前記一般に行われているような路線の中間点から鉄道沿線までの影響距離により接近係数を算定し路線価に反映することができるのである。)。

なお、前記のとおり、従前地七四一番一が全部整地されていたものとして計算するに当たり、鉄道修正を行わなかったので(〈書証番号略〉別紙B(1)(2)参照)、この点も問題がなくなっている。

③ ③の控訴人らの従前地について保留地減歩をする必要がない旨の主張について

前記のとおり、土地区画整理事業の施行地区内の土地は、事業施行によってもたらされる宅地の利用増進の度合いに応じて減歩を負担すべきところ、控訴人らの従前地についても、里道がなくなり、土地の区画形質が整形化され、周辺道路が整備されたことにより、利用増進が著しく図られているから、控訴人らが保留地減歩を負担するのは当然である。なお、従前地七四一番一、従前地七四六番三の保留地減歩率は12.16パーセント、従前地七四六番一、同番二の保留地減歩率は11.4パーセントであり、平均保留地減歩率14.46パーセントと比較して過重ではない。

(二) 工事未了の違法について

前記のとおり、控訴人郁次郎は、被控訴人に対し、従前地に存在する建物を移転することを拒絶しており、しかも、右建物を移転しなくても、土地区画整理事業に支障がなかったので、被控訴人としては、法七七条一項所定の手続をとらなかったものであり、このような場合には、法一〇三条二項及び定款六九条に違反するものではない。

(三) (三)の土地評価の違法について

(1) (1)の整理前の画地評価の誤りについて

① ①の従前地七四四番一の画地評価の誤りについて

前記(一)、(5)、②、イ、(ア)のとおり。

② ②の奥行修正の適用違反について

前記(一)、(5)、②、イ、(イ)、のとおり。

③ ③の三角地修正の適用違反について

前記(一)、(5)、②、イ、(イ)、のとおり。

④ ④の高低差修正の適用違反について

前記(一)、(5)、②、イ、(イ)、のとおり。

⑤ ⑤の従前地七四一番一の画地評価の不正について

前記(一)、(5)、②、イ、(ウ)のとおり。

⑥ ⑥の従前地七四六番二の画地評価の誤りについて

控訴人らは、右土地を全て盲地として評価していると主張しているが、そのような事実はない。

すなわち、〈書証番号略〉のとおり、正面道路から適正奥行とされている二四メートルまでは正面道路の路線価により計算し、これを超える部分は、換地細則二四条二項により盲地逓減率を乗じて修正しているものである。

⑦ ⑦の従前地七四六番三の画地評価の誤りについて

前記(一)、(5)、②、イ、(エ)のとおり。

(2) (2)の暫定換地の誤りについて

① ①の従前地七四四番一の暫定換地について

前記(一)、(5)、②、ロ、(ア)のとおり。

② ②の従前地七四六番一、同番二の暫定換地について

前記(一)、(5)、②、ロ、(イ)のとおり。

③ ③の訴外高橋両名の従前地七六九番一、同番九の暫定換地について

前記(一)、(5)、②、ロ、(ウ)のとおり。

(3) (3)の整理後の画地評価の誤りについて

① ①の井祐吉兵衛、鈴木菊治郎の換地について

前記(一)、(5)、②、ハ、(ア)及び同(イ)のとおり。

② ②の安藤武男、小松春治の換地について

前記(一)、(5)、②、ハ、(ウ)及び同(エ)のとおり。

③ ③の鉄道修正の適用違反について

前記(一)、(5)、②、ハ、(オ)のとおり。

なお、控訴人らは、従前地七四四番一と換地一番八の減価割合をみると、換地一番八の減価割合は従前地七四四番一のそれに比して不当に低いと主張するが、従前地七四四番一の鉄道修正はマイナス二二であるに対し、換地一番八のそれは二四である(換地一番八の正面路線一八―Cの路線価の算出に当たり鉄道修正係数マイナス0.1の減点をしているが、これはマイナス二四の鉄道修正に相当するものである。)から、右主張は失当である。

(4) (4)の路線価計算の誤りについて

控訴人らは、6―E街路は歩道二メートルがつけられたのみであると主張しているが、右街路は両側に二メートルの歩道が設けられて一三メートルの幅員になったものであるから、右主張は失当である。

また、土地区画整理事業の施行によって、右街路は、北方面が旧国鉄内房線を横断し、君津市坂田を経て国道一六号線に接続し、南方面が幅員二三メートルないし二五メートルに拡幅され、施行地区内の主要幹線道路になった街路番号1―A、同1―Bの都市計画道路に接続することとなったため、施行地区内の幹線道路としての性格が一層高まったとともに、施行地区内の道路の新設、変更により、街路としての系統性、連続性も向上したものである。よって、被控訴人が換地細則の路線価算定基準第三号表に基づいて、右街路につき、tの値を4.1としたことは適法である。

(5) (5)の換地清算金の誤りについて

被控訴人が控訴人らの従前地、換地について行った土地評価は前記のとおり適法であるから、清算金の算定も適法である。

なお、仮に従前地七四一番一、従前地七四六番三の評価計算に当たり、合計二六三平方メートルの地積につき未整地として評価したことが違法であるとしても、前記(一)、(1)、④において主張のとおり、清算金の追加支払処分をしたので、従前地七四一番一、従前地七四六番三についての従前の清算金処分は変更され、右違法は存在しなくなった。

2  請求原因4の保留地の設定について

(一) (一)の原判決別表三1記載の保留地の設定について

(1) (1)の法違反ないし必要性がない旨の主張について

被控訴人がこの保留地を一街区にとったのは、地域発展の中心的な商店街となるべき商業保留地を設けるべきであるという総代会の総意によるものであり、もとより、法九六条一項及び定款七条に基づいたものである。この保留地を設けたことにより、一括売却が可能となり、売却に要する経費の節減及び事業資金の資金繰りの円滑化を図ることができ、有意義であったものである。

(2) (2)の同保留地の設定に手続違反がある旨の主張について

この保留地の設定に当たっては、昭和四七年一二月六日事業計画変更に関する総代会の議決を経て、昭和四八年二月一二日千葉県知事から右変更の認可を受けるとともに、同年三月三〇日保留地設定について総代会の議決を受けているので、何ら違法な点はない。

(二) (二)の原判決別表三2記載の保留地の設定について

被控訴人が右付け保留地を設けたのは次の理由によるものである。すなわち、被控訴人は、昭和四九年六月二〇日控訴人郁次郎に対する仮換地指定の変更処分をしたが、これと同時に前記のとおり、同人所有の建物一二棟のうち七棟の移転計画を立てるとともに、右建物の移転に当たり、従前の建物と建物の間隔(約二メートル)を確保して建物が移転できるようにするためには、換地一番一九、同一番二〇及び同一番八の広さでは地積が不足すると考えられたので、控訴人らのために右付け保留地を設定したものである。この付け保留地が控訴人らにとって利益になっても不利益にならないことは、前記1、(一)、(3)、②のとおりである。

請求原因5の訴外高橋両名に対する換地処分について

訴外高橋両名の従前地七六九番九は、三八平方メートルの過少宅地であって、もし、これを従前地七六九番一と集合することなく換地することになると、これに対する換地が画地としての基準に達しないことになるので、右集合の上、換地したものである。

また、前記のとおり、集合保留地を設けたため、右換地を原位置又はその付近にすることができず、右集合保留地の南側に目白押しに飛換地せざるを得なかったものであるから、照応原則に違反することはない。

五  被控訴人の主張に対する認否

いずれも争う。

第三  証拠関係〈省略〉

理由

第一被控訴人の本案前の主張について

一主位的請求の趣旨(一)(2)の保留地の設定の取消しの訴えについて

控訴人らは、法一〇三条一項所定の関係権利者に換地計画において定められた関係事項を通知してする換地処分と同等のものとして、保留地の設定という行政処分が存在する(同条四項所定の公告の日にされたと解すべきであると主張する。)とした上で、主位的請求の趣旨(一)(2)の保留地の設定の取消しを求めているものと解される。

土地区画整理組合施行の土地区画整理事業においては、施行者は、施行地区内の宅地について換地処分を行うため、換地計画を定め、都道府県知事の認可を受けなければならないとされており(法八六条一項)、換地計画においては、換地、清算金、保留地等に関する事項を定めることとされ(同八七条)、保留地については、土地区画整理事業の費用に充てること等の目的のためこれを定めることができるものとされている(同九六条一項)。そして、換地処分は、関係権利者に換地計画において定められた関係事項を通知してするものとされているが(同一〇三条一項)、右による通知は、個々の権利者に対し当該権利者に関する換地(狭義の)及び清算金の明細について行われるものであり、保留地の設定については、施行地区内の全土地所有者の減歩によりされるものであるから、特定の者に対する通知は予定されていないものと解され、施行者による特段の行為がなくとも、法一〇三条四項所定の公告があると、その効果として、法一〇四条九項の規定により、公告のあった日の翌日において施行者が換地計画において定められた保留地を取得するものとされているのである。

以上にみたとおり、保留地の設定については、換地(狭義の)及び清算金についての処分と異なり、換地計画の決定及びその認可と別個に行政庁(施行者)の公権力の行使に当たる行為が存在するわけではなく、法一〇三条四項所定の公告があったことにより施行者が保留地を取得する法律効果が生じるとしても、それは法の規定によるものであって、そのことから前記通知によってされる換地処分(狭義の換地処分及び清算金についての処分)と同等の意味での保留地の設定という行政処分が存在するものということはできない。

したがって、控訴人らの主位的請求の趣旨(一)(2)の保留地の設定の取消しを求める訴えは、その対象を欠く不適法なものであり、却下を免れない。

二主位的請求の趣旨(一)(3)の訴外高橋両名に対する換地処分の取消しの訴えについて

控訴人郁次郎、同淳子は、訴外高橋両名に対する換地処分の換地は、控訴人郁次郎、同淳子所有の従前地七四六番一の所在地であり、右従前地についての換地処分が取り消されれば、同人らに換地として交付されるべき土地であるから、訴外高橋両名に対する換地処分の取消しを求める原告適格を有する旨主張する。

しかしながら、仮に訴外高橋両名に対する換地処分の取消しの訴えにおいて右換地処分が取り消されたとしても、被控訴人としては、訴外高橋両名に対する換地処分を改めて行うべき義務が発生することになるにすぎず、控訴人郁次郎、同淳子に対する換地処分を取り消して新たに換地処分をすべき義務が発生することになるわけではなく、当然に右控訴人らが従前地七四六番一の土地を換地として交付を受けられることになるものでもないから、本来、控訴人らには、訴外高橋両名に対する換地処分の取消しを求める訴えだけを提起する利益はないというべきである。

また、控訴人郁次郎、同淳子の従前地七四六番一についての換地処分の取消しの訴えにおいて、同換地処分が取り消されれば、控訴人郁次郎、同淳子は右従前地に対する所有権を回復することになり、右従前地について重複して所有権が存立することができない結果、右従前地を換地とする訴外高橋両名に対する換地処分も連鎖的に当然無効になるものと解されるから、控訴人郁次郎、同淳子の右従前地についての取消しの訴えに併合して訴外高橋両名に対する右従前地を換地とする換地処分の取消しの訴えを提起する必要もないものというべきである。

したがって、控訴人郁次郎、同淳子には、訴外高橋両名に対する換地処分の取消しを求める訴えの利益はなく、控訴人郁次郎、同淳子の主位的請求の趣旨(一)(3)の訴外高橋両名に対する換地処分の取消しの訴えは、不適法であるから却下を免れない。

第二本案の主張について

一請求原因1、2の事実は、当事者間に争いがない。

二同3の換地処分の違法性について判断する。

1  同3、(一)の法八九条の照応原則違反について

(一) 法八九条は、換地を指定する基準として「換地及び従前の土地の位置、地積、土質、水利、利用状況、環境等が照応するように定めなければならない」旨規定しているところ、土地区画整理においては、その本質上、土地の区画、形質に変更を生じるものであるし、また道路、公園等公共施設の新設を伴うことが通常であるため、全ての条件が従前の土地に照応するように換地を定めることは、技術的にもほとんど不可能であるから、右規定は、各換地がおおむね公平に定められるべきことを規定したものと解するのが相当である。したがって、前記諸要素を総合的に勘案してもなお従前の土地と著しく条件が異なり、かつ近隣の土地所有者に比較して著しく不利益な処分をしたものであって、そのことにつき合理的な理由がない場合でない限り、当該換地処分は違法とならないものと解すべきである。

そこで、右見地から控訴人らの照応原則違反の主張について判断することにする。

(二) 同3、(一)、(1)の従前地七四一番一、換地一番二〇について

(1) ①について

証拠(〈書証番号略〉)によれば、一五―一街区は、長辺約七五メートル、短辺約三五メートル、奥行約七五メートルの台形状の土地であって、被控訴人の施行区域内の標準的な街区に比較して奥行が長いことが認められる。

しかしながら、証拠(〈書証番号略〉、原審証人平川)及び弁論の全趣旨によれば、一五―一街区は、北を国鉄内房線、西を本件県道によって画されているという特殊性があり、また仮に原判決別紙図面五の一六街区と一七街区との間の区画整理道路をそのまま延長して一五―一街区の間に設けたとするなら、道路用地として四〇〇平方メートル以上の土地が必要となり、右の増加は被控訴人が評価式換地設計法と地積式換地設計法の折衷式ないし暫定換地方式を採用しているので、地先の土地所有者である控訴人らのみが負担するのではなく、施行地区内の関係者全員の負担となることが認められる。さらに、右道路を一五―一街区に設けると、街区内の画地のしわ寄せを受けて、控訴人らの画地以外の面積の少ない画地を他の街区に飛換地せざるを得ないことにもなり、控訴人ら以外の画地の権利者にとって、照応原則に反する結果となるおそれがある。

したがって、右のような事情のある一五―一街区においては、奥行の長い設計をしたとしても、そのこと自体が照応原則に反して違法と評価すべきではなく、また、一五―一街区の右のような大きさを維持したことによって、控訴人らの各従前地とそれに対する各換地を比較して特段土地の利用状況が悪化するものとはいえないので、一五―一街区の換地設計は適法である。

(2) ②について

証拠(〈書証番号略〉)によれば、従前地七四一番一の土地は、西側の全部が直接本件県道に接続していたわけではなく、その一部は幅1.2メートルのいわゆる里道に接していたこと、この里道と本件県道との間には従前地七四六番三(田二〇平方メートル)が介在していたこと、したがって、従前地七四一番一の西側のうち本件県道に接する部分は二か所に分かれており、その間口は一三メートルと四メートルであったこと、換地一番二〇は、本件県道に接する間口が23.668メートルであること、以上の事実が認められる。

右認定事実によれば、道路法の適用がある公道に接する長さの比較においては、換地一番二〇の方が長いことになるので利用価値が増進しているというべきであり、また、証拠(〈書証番号略〉、原審証人平川)及び弁論の全趣旨によれば、従前地七四一番一が接していた里道に関して角地計算がなされ(換地細則には角地の評価規定を欠いているが、〈書証番号略〉及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人は、角地の評価については、一般に折衷式で採用されている計算法を採用して総代会の承認を得たことが認められる。)従前地の評価が高くなっていることが認められるので、里道に接していることも換地一番二〇の地積に反映されているということができ、この点からいっても、間口の比較の点において照応原則違反はないと解される。

(3) ③について

まず、換地の割り込みの点について判断する。

〈書証番号略〉によれば、換地細則一六条二項には、換地を割り込むには道路に直角の線を背割まで引いて換地の筆界とする旨規定していることが認められる。しかし、右条項は、換地の割り込みに当たっての基本原則を定めたものであり、換地細則三七条によれば、特別の事情が存する場合には換地細則一六条二項に従わないこともできると解される。

そこで、右事情の存否につき検討するに、証拠(〈書証番号略〉、原審証人平川)によれば、本件県道は、本件土地区画整理事業以前から同じ位置にあった県道の幅員を拡げたものであって、北方が国鉄内房線を横断し君津市内を経て国道一六号線に達し、また南方は都市計画道路三・三・四号線に達する連続性のある道路であることが認められ、このような既設の県道を一五―一街区に直角に交わるように変更することは極めて困難であり、法六条四項の「事業計画は公共施設その他の施設又は土地区画整理事業に関する都市計画が定められている場合においては、その都市計画に適合して定めなければならない」との規定にも反することになる。

そして、〈書証番号略〉によれば、本件県道に沿う街区については、一五―一街区の北側にある二街区を除いては、いずれの街区も本件県道に対し換地の割り込みが直角になっていないこと、二街区は面積も小さく東側に県道と並行の道路が作られたので直角の割り込みが可能であったが、一五―一街区は面積及び形状からみて直角の割り込みは極めて困難であることが認められるので、換地一番二〇の換地の割り込みが本件県道に直交していないとしても、換地細則に反せず、照応原則に違反しないというべきである。

次に、背割線の点について判断する。

証拠(〈書証番号略〉、原審における控訴人淳子)によれば、換地一番二〇の背割線が原判決別紙図面五のとおりカギ型になっていること、仮換地指定の際には右背割線は真っ直ぐになっていたこと、換地の背割線は権利者の利用の便宜から直線にするのが原則であること、以上の事実が認められる。

しかし、証拠(原審証人平川)によれば、仮換地のときに真っ直ぐであった背割線がカギ型になった理由は、確定測量の際に仮換地指定における面積の測量誤差が発見され、換地一番八の面積が増え換地一番二〇の面積が減ったために換地一番八の西側が換地一番二〇の一部に食い込むような形になったものであることが認められる。

そして、後記(6)のとおり、従前地七四一番一(換地一番二〇)は控訴人郁次郎と同晃の、従前地七四四番一(換地一番八)は控訴人郁次郎と同淳子の各共有となっているが、右各土地は、照応原則の適用に当たっては、同一人の所有に属するものと同視して取り扱うことができるというべきであるから、控訴人らとしては右両換地を一体的に利用することができ利用状況が悪化することにはならないので、背割線をカギ型にせざるを得なかったことは照応原則に違反しないと解される。

(4) ④について

証拠(〈書証番号略〉、原審及び当審における控訴人淳子)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人らの従前地七四一番一(973.52平方メートル)のうち730.52平方メートルについては整地済みとして一〇パーセントの加算がなされているが、その余の二四三平方メートル及び従前地七四六番三の二〇平方メートルについては未整地とされ右加算がなされていないこと、しかし、右二四三平方メートル及び二〇平方メートルは、昭和四五年三月当時埋め立てられ整地済みであったことが認められ、右認定に反する証拠(〈書証番号略〉、原審及び当審証人平川)は採用できない。

しかし、前記一の争いのない事実及び証拠(〈書証番号略〉、当審証人平川)によれば、右二四三平方メートル及び二〇平方メートルが整地されていたとして換地計算した場合の配当地積増加分は5.67平方メートル(従前地七四一番一については、換地地積774.07平方メートルに対し、増加分は5.24平方メートル、従前地七四六番三については、換地地積15.59平方メートルに対し、増加分は0.43平方メートル)であることが認められるところ、本件土地区画整理事業における平均の実質減歩率(減歩地積の従前地の台帳地積に対する割合)が29.94パーセントである(当審証人平川)のに対し、従前地七四一番一、従前地七四六番三の換地一番二〇の換地地積は789.66平方メートルで実質減歩率は20.52パーセントであることを考慮すると、右二四三平方メートル及び二〇平方メートルについて右加算がなされなかったことは、照応原則に違反する不均衡とまではいえず、清算金の調整によって賄われるべきことにすぎないと解される(本件土地区画整理事業においては、換地処分が終了し、被控訴人は清算段階にあるので、換地処分のうちの清算金処分の違法性が問題になるが、この点については、後記3、(五)のとおりである。)。

そうすると、控訴人らの主張は理由がない。

(5) ⑤について

控訴人らは、権利地積は地先負担基準地積から地先負担地積を控除したものであることを根拠にして、従前地七四一番一、従前地七四六番三の実質公共減歩地積は、別表1記載のとおり、59.79平方メートルの増換地とならねばならない旨主張するので、検討する。

証拠(〈書証番号略〉、原審及び当審証人平川)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

本件土地区画整理事業においては、換地設計法としていわゆる折衷式(地積式換地設計法と評価式換地設計法を結合させた換地設計法という意味)ないし暫定換地方式を採用しており、これに従い従前地七四一番一、従前地七四六番三等について権利地積(別表1、2記載の地先負担基準地積のことで台帳地積に加算地積を加えたもの)、公共減歩地積(地先負担地積〔沿道負担地積ともいう。〕と共通負担地積。ただし、本件土地区画整理事業においては共通負担地積を負担させていないので、地先負担地積がこれに当たる。)、保留地減歩地積等の関係を具体的に示せば、別表2記載のとおりである。

以上の事実が認められ、右認定に反する証拠(〈書証番号略〉、当審証人宮川)は採用できない。

右認定事実によれば、従前地七四一番一、従前地七四六番三の実質公共減歩地積は83.01平方メートルとなるから、控訴人らの右主張は理由がない。

また、控訴人らは、換地一番二〇及び換地一番一九については宅地の利用増進は皆無であるから、保留地減歩は一切不要である旨主張するが、土地区画整理事業においては、公共減歩及び保留地減歩は避けられないことであって、施行地区内の土地は事業施行によってもたらされる利用増進の度合いに応じてこれらの減歩を負担すべきであり、換地一番二〇、換地一番一九についても、証拠(〈書証番号略〉、原審証人平川)によれば、右換地が面する本件県道は一三メートルに拡幅され、里道がなくなり、土地が整形化され、周辺の道路が整備されたことなどにより土地の利用増進が認められるのであるから、控訴人らの右主張も理由がないというべきである。

(6) ⑥について

証拠(〈書証番号略〉、原審における控訴人淳子)によれば、従前地七四一番一と従前地七四四番一上には原判決別紙図面四のとおり控訴人郁次郎所有の建物が合計一二棟あり、そのうち五棟が従前地七四一番一上に、六棟が従前地七四四番一上に、一棟が両土地の境界線上に建っていたが、従前地七四一番一の東側に建っていた五棟の建物のうち一棟半しか右従前地の換地一番二〇の上には乗っていない(なお、従前地七四四番一上の六棟の建物についてはそのうち三棟半しか右従前地の換地一番八の上には乗っていない。)ことが認められる。

確かに、照応原則上からは、従前地上の既存の建物を移転しないように換地を指定するのが理想であるが、土地区画整理においては全ての土地について建物の移転をしないですますことはできず、証拠(〈書証番号略〉、原審証人平川、原審における被控訴人代表者佐久間)によれば、被控訴人は、控訴人郁次郎所有の右一二棟の建物のうち七棟を被控訴人の費用で〈書証番号略〉(建物移転計画図)のとおりに移転する計画を立て、昭和四九年から昭和五四年まで被控訴人の磯貝副理事長と坂本副理事長が控訴人郁次郎と右計画に基づく建物移転の交渉をしていたが、控訴人郁次郎の同意を得られなかったこと、昭和五四年四月二四日以降は文書で建物移転調査立ち入り通知を数回出したが、控訴人郁次郎が同年六月四日付け内容証明郵便による文書をもって移転を拒絶したため、被控訴人は建物移転計画を取り止めたものの、被控訴人はその後も控訴人らの承諾があれば右移転計画を実行に移す用意があったことが認められ、右事情の下では従前地と換地が照応しているか否かの判定に当たっては、〈書証番号略〉のとおりに建物が移転されているものとして判断するのが相当である。

右計画によれば、従前地七四一番一と従前地七四四番一上における右一二棟の建物の利用と、換地一番二〇と換地一番八上での移転後の建物の利用とで利用価値の点で著しい差異は認められない。そして、このような換地一番二〇と換地一番八を一体として利用することを前提とした建物移転計画は、従前地七四一番一と従前地七四四番一との境界線上に建物が一棟建っていたというように両従前地が一体として利用されていた点からも是認できるものである。

さらに、従前地七四一番一と従前地七四四番一の所有関係についてみるに、証拠(〈書証番号略〉、原審証人平川)によれば、従前地七四四番一の持分五五分の一が控訴人晃(控訴人郁次郎の子)の、従前地七四四番一の持分六〇分の一が控訴人淳子(控訴人郁次郎の妻)のそれぞれ所有に属しているが、右持分は、いずれも仮換地指定処分後の昭和五四年八月一日(従前地七四一番一)と同年四月一五日(従前地七四四番一)に控訴人郁次郎から贈与されたものであることが認められる。このような場合には、照応原則の適用上は、右両従前地が同一人の所有に属するものと同視できるものというべきである。

したがって、従前地七四一番一上の五棟の建物が換地一番二〇上には一棟半しか乗らなくても照応原則に違反しないというべきである。

(三) 同3、(一)、(2)の従前地七四六番三、換地一番一九について

証拠(〈書証番号略〉)によれば、従前地七四六番三は、本件県道と里道に挾まれた二〇平方メートルの土地であり、それのみでは利用することができなかったが、換地一番一九は間口が約0.56メートル、奥行が約二九メートルと間口に比べ奥行が長いものの、換地一番二〇、換地一番八と一体的に利用することができることが認められる。

右認定事実によれば、本件土地区画整理事業の前後で土地の利用価値に差異はないので、換地の奥行が長いことが照応原則に違反するものではない。

(四) 同3、(一)、(3)の従前地七四四番一、換地一番八について

(1) ①について

証拠(〈書証番号略〉、当審証人平川)によれば、原判決別紙図面一のとおり、従前地七四四番一の東側及び西側の道路はいわゆる里道であり、その幅員は1.2メートルにすぎなかったこと、同土地の東北側13.5メートルが幅員六メートルの市道に面していたにすぎないこと、換地一番八は、東側15.55メートルが区画整理道路に面することになり、また形状も整形化し利用条件が従前地よりも増進していること、以上の事実が認められる。

右認定事実によれば、公道に接する長さでは換地一番八の方が長いので利用価値が増進したと考えられ、また、証拠(〈書証番号略〉、原審証人平川)によれば、里道に関し角地計算がなされることにより換地の地積が加算されていることが認められるので、本件土地区画整理事業前後の間口の比較の点において照応原則違反は認められない。

(2) ②について

まず、換地一番八上には建物が三棟しか乗っていないとの点であるが、〈書証番号略〉によれば、従前地七四四番一上には控訴人郁次郎所有の建物が六棟あったが、換地一番八上には三棟半しか乗っていないことが認められる。しかし、前記(二)、(6)のとおり、土地区画整理においては建物を全く移動せずに換地を行うことは技術的に困難であり、また、前記のとおり、従前地と換地が照応しているか否かの判定に当たっては、〈書証番号略〉のとおりに建物が移転されているものとして判断するのが相当であり、これによれば従前地と換地の利用価値にはそれほど違いはないので、換地一番八に建物が三棟半しか乗っていないことをもって照応原則に違反するとはいえない。

次に、〈書証番号略〉のとおりに建物を移転すると、出入口の前面が隣地との境界線に接する建物ができ、これらの建物は換地一番九の保留地を通らないと出入りができなくなるとの点であるが、証拠(〈書証番号略〉、原審証人平川)及び弁論の全趣旨を総合すると、右保留地はいわゆる付け保留地といわれるものであって、被控訴人の定款により、建物の移転又は除却をすることなく、従来同様に建物を利用できるようにすることを目的として設けられたものであり、控訴人らは右保留地を買い受けることによって右目的を達成することができ、控訴人らはこれを買い受けることによって利益になっても不利益になることはないことが認められる。

照応原則の適用に当たっては、土地所有者が付け保留地を買い受けることを前提にすることが許されるものというべきであるところ、右にみたところによれば、この点も照応原則に違反することはないと解される。

(五) 同3、(一)、(4)の従前地七四六番一、同番二、換地一番一八について

(1) ①について

〈書証番号略〉によれば、従前地七四六番一、同番二は更地であったが、換地一番一八上には控訴人郁次郎所有の建物が建っていることが認められる。

しかし、前記(二)、(6)のとおり、従前地と換地が照応しているか否かの判定に当たっては〈書証番号略〉(建物移転計画図)のとおりに建物が移転されている(すなわち、換地一番一八は更地になっている。)ものとして判断するのが相当であり、また〈書証番号略〉によれば、従前地七四六番一、同番二の持分各一〇〇分の一が控訴人淳子の所有に属しているが、その余は控訴人郁次郎が所有していることが認められるので、換地一番一八上に控訴人郁次郎所有の建物が建っているままでも、右換地の利用に支障があるわけではないから、照応原則に違反しないというべきである。

(2) ②について

換地一番一八の割り込みが本件県道に対し直角になっていないとしても、前記(二)、(3)のとおり、そのことによって照応原則に違反することにはならない。

(3) ③について

控訴人らは、従前地七四六番一、同番二の実質公共減歩地積は、30.56平方メートルの増換地にならねばならない旨主張するが、前記(二)、(5)の認定のとおり、本件区画整理事業においては、実質公共減歩地積は実質地先負担地積(右従前地については152.89平方メートル)となるから、控訴人らの主張は理由がない。

また、控訴人らは、従前地七四六番一、同番二は宅地の利用増進は皆無であるから、保留地減歩は一切不要である旨主張するが、土地区画整理事業においては、公共減歩及び保留地減歩は避けられないことであって、施行地区内の土地は事業施行によってもたらされる利用増進の度合いに応じてこれらの減歩を負担すべきであり、従前地七四六番一、同番二についても、証拠(〈書証番号略〉、原審証人平川)によれば、右従前地が面する本件県道は一三メートルに拡幅され、周辺の道路が整備されたことなどにより土地の利用増進が認められるのであるから、控訴人らの右主張も理由がないというべきである。

(六) 同3、(一)、(5)の控訴人らに対する各換地処分について

(1) ①について

控訴人らの従前地の位置、形状のおおよそが原判決別紙図面一のとおりであって、これを簡略化すると、別紙図面一のとおりであること、控訴人らの換地の位置、形状のおおよそが原判決別紙図面二のとおりであることは、被控訴人において明らかに争わないところである。

控訴人らは、本件換地処分により、換地は全部県道より東側になり、更地は消滅し、2207.57平方メートルという大面積の土地が中央部に道路もなく出現したものであるから、利用状況、位置、地積において照応しない旨主張するので、検討する。

まず、利用状況、位置については、右争いのない事実、〈書証番号略〉によれば、従前地七四六番一、同番二を換地一番一八に飛換地したことについては、換地細則四条一項(3)という根拠があり、飛換地になったとしても、他の換地と一体的に利用することができること、換地一番一八が更地にならなかったのは、前記(二)、(6)のとおり、控訴人郁次郎が建物の移転を拒絶したことによるものであることが認められるので、照応原則に違反しないというべきである。

次に、地積については、証拠(〈書証番号略〉、当審証人平川)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人らの従前地の実質減歩率は、従前地七四一番一及び従前地七四六番三が20.52パーセント、従前地七四四番一が18.55パーセント、従前地七四六番一、同番二が25.37パーセントであり、本件土地区画整理事業における平均実質減歩率は29.94パーセントであることが認められるので、この点も照応原則に違反しないというべきである。

(2) ②について

① イ、(ア)について

控訴人らは、従前地七四四番一を別紙図面二のとおりA部分とB部分に区分し、B部分は従前地七四一番一と同一所有者のものとして正面路線価(九六〇)により合筆計算すべきである旨主張し、これにそう証拠(当審証人宮川)が存在する。

証拠(〈書証番号略〉、当審証人宮川)によれば、従前地七四四番一(733.87平方メートル)を367.00平方メートルの土地と366.87平方メートルの土地に区分し、前者につき路線価八六〇を、後者につき路線価七三〇をそれぞれ採用し、B部分につき控訴人ら主張のように正面路線価(九六〇)により合筆計算していないことが認められる。

ところで、控訴人らの右主張の根拠は、従前地七四四番一は正背地なので、換地細則二九条本文により、二宅地とみなしてA部分、B部分に区分し、その上でB部分のみにつき換地細則二三条一項ただし書を適用して従前地七四一番一と合筆計算すべきであるというものである。

しかし、合筆計算するのであれば、従前地七四四番一は一筆の土地であるから、B部分だけでなく、従前地七四四番一全体と従前地七四一番一とを一体として評価すべきであるところ、証拠(〈書証番号略〉、当審証人平川)及び弁論の全趣旨によれば、本件土地区画整理事業の施行地区は新開発地区であって、従前の土地の大部分は、農地で耕地整理がされていなかったため、いわゆる法定外公共道路(里道)に面する不整形の土地であったこと、そこで、被控訴人は、整理前の土地評価に当たり、全ての土地につき、不整形による修正を行わなかったことから合筆計算も行わなかったもので、従前地七四四番一、従前地七四一番一を一体と見た場合には不整形の土地となるけれども、他の土地の評価の均衡上、換地細則三七条(特別の事情があるもの又は換地細則によりがたいものについては、理事会の意見を聞いて理事長が適宜にこれを決定するものとする。)により合筆計算しなかったこと、以上の事実が認められる。

右認定事実によれば、被控訴人が右合筆計算をせず、したがって、B部分につき路線価九六〇により評価計算しなかったことに平等原則違反は認められない。

② イ、(イ)について

まず、についてであるが、小倉の従前地(水神免七四三番)につき奥行修正をすべきなのにこれをしていないこと、控訴人らの従前地七四一番一及び従前地七四六番一、二については奥行修正をしていることは、当事者間に争いがない。

控訴人らは、被控訴人の右行為は故意に控訴人らを不利益に取り扱うものであると主張するが、これを認めるに足りる証拠はないのみならず、証拠(〈書証番号略〉)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人らの右従前地について適正に奥行修正がなされていることが認められるので、控訴人らの主張は理由がないというべきである。

次に、についてであるが、坂本の従前地(水神免七三六番二)及び伊藤の従前地(水神免七四五番二)につき三角地修正すべきなのにこれをしていないことは、当事者間に争いがない。

控訴人らは、被控訴人の右行為は故意に控訴人らを不利益に取り扱うものであると主張するが、証拠(当審証人平川)及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人は、整理前の各土地について不整形修正をしなかったことから、それとの均衡上、本件土地区画整理事業施行地区内の整理前の土地全部につき三角地修正をしなかったことが認められるので、被控訴人の右行為に平等原則違反は認められない。

次に、についてであるが、小倉の従前地(水神免七四三番、七七八番二)、坂本の従前地(水神免七三六番一、二)、伊藤の従前地(水神免七四五番二)、井祐の従前地七四八番、安藤の従前地(水神免七四五番一、四)、小松の従前地(水神免七五二番)、小林の従前地(水神免七四九番)につき高低差修正をしていないことは、当事者間に争いがない。

控訴人らは、被控訴人の右行為は故意に控訴人らを不利益に取り扱うものであると主張するが、証拠(当審証人平川)及び弁論の全趣旨によれば、右各従前地については、整理後の換地計算の際に、配当を受けるべき換地の評価指数に高低差修正をしていることが認められるので、被控訴人の右行為に平等原則違反は認められない。

③ イ、(ウ)について

前記(二)、(4)の認定のとおり、被控訴人が整地ずみである従前地七四一番一のうち二四三平方メートルを未整地と評価したことが認められるが、しかし、同所において判断したとおり、右評価の誤りによって生じる不均衡は照応原則に違反するものではないから、控訴人らの主張は理由がない。

④ イ、(エ)について

前記(二)、(4)の認定のとおり、被控訴人が整地ずみである従前地七四六番三(二〇平方メートル)を未整地と評価したことが認められるが、しかし、同所において判断したとおり、右評価の誤りによって生じる不均衡は照応原則に違反するものではないから、控訴人らの主張は理由がない。

⑤ ロ、(ア)について

控訴人らは、従前地七四四番一については、別紙図面三のようにA部分とB部分に分けて暫定換地をすべきであると主張し、これにそう証拠(〈書証番号略〉、当審証人宮川)が存在する。

被控訴人が、従前地七四四番一について、右の控訴人ら主張のような暫定換地をしていないことは、当事者間に争いがない。

しかし、(ア)暫定換地について規定する換地細則九条は、暫定換地は原位置において権利地積より地先負担地積を控除した残地積を暫定的に算出した地積とする旨規定するにとどまること(〈書証番号略〉)、(イ)一筆の土地につき何故にA部分とB部分に分けて暫定換地をするのか疑問があるのみならず、控訴人らの主張によると、A部分とB部分の中間の土地の暫定換地はどこの位置に組むのか不明であること、(ウ)B部分のうち、本件県道に面している土地には伊藤昌一の従前地(水神免七四五番二・田一二〇平方メートル、従前地七四一番一の換地一番二〇の一部となる。)が存在しており、同所で暫定換地を組むとすれば、二重に暫定換地を組むことになる結果、二重に沿道地先負担をさせることになり不合理であること(〈書証番号略〉、当審証人平川)、以上の点を考慮すると、控訴人らの主張は理由がないというべきである。

⑥ ロ、(イ)について

控訴人らは、換地細則九条を根拠にして、従前地七四六番一、同番二については、原位置の角地(別紙図面三の赤線で囲まれた部分)に暫定換地すべきである旨主張し、これにそう証拠(〈書証番号略〉、当審証人宮川)が存在する。

しかし、証拠(〈書証番号略〉、当審証人平川)及び弁論の全趣旨によれば、本件土地区画整理事業においては、従前地七四六番一、同番二が存在していた原判決別紙図面二記載の一四街区に広大な面積の集合保留地(約九六〇〇平方メートル)を設けたため、右集合保留地内にあった従前地については飛換地せざるを得なかったこと、右集合保留地内にあった従前地については、右集合保留地内には本件土地区画整理事業で新設される道路が全く存在しなかったため、右集合保留地内の従前地の位置又はその付近に仮定の区画整理道路を想定して暫定換地を組むことは相当ではなかったことから、換地細則三七条(特別の事情があるもの又は換地細則によりがたいものについては、理事会の意見を聞いて理事長が適宜にこれを決定するものとする。)により、実際に換地を交付する位置において暫定換地を計算したこと(そこで、本件土地区画整理事業においては、暫定換地の計算は、施行地区内の土地全てにつき実際に換地を交付する位置において行ったこと)、したがって、従前地七四六番一、同番二については換地一番一八の位置において暫定換地を計算したこと、このような計算方法は、換地設計の一つの手法として容認されていること、以上の事実が認められ、右認定事実によれば、被控訴人が従前地七四六番一、同番二につき換地一番一八の位置において暫定換地を計算したことは相当であり、控訴人らの主張は理由がないというべきである。

⑦ ロ、(ウ)について

控訴人らは、訴外高橋両名の従前地七六九番一、同番九についての暫定換地の計算は換地細則四条二項、九条、一〇条に違反し、控訴人らに対し著しい不利益な取扱いをしている旨主張する。

しかし、証拠(〈書証番号略〉、当審証人宮川、同平川)によれば、訴外高橋両名の右従前地の暫定換地の計算はその換地を交付する位置で行っていること(飛換地をせざるを得なかったことについては後記四のとおりである。)が認められるところ、右のような暫定換地の計算方法が換地細則に違反しないことについては、右⑥に説示したとおりであるから、控訴人らの主張は理由がない。

⑧ ハ、(ア)について

控訴人らは、被控訴人が井祐吉兵衛の換地一二番三、鈴木菊治郎の換地二番一の画地評価を誤った結果、右各換地の平方メートル当たり画地評価指数が違法に低くなり、減歩が不当に軽減されている旨主張し、これにそう証拠(〈書証番号略〉、当審証人宮川)が存在する。

しかし、証拠(〈書証番号略〉、当審証人平川)及び弁論の全趣旨によれば、本件土地区画整理事業においては君津市の他の土地区画整理組合と同様に、画地の適正奥行を二四メートルと定めたこと(換地細則第八号表参照)、それで、右井祐、鈴木の各換地については、正背道路間の奥行が三〇メートルで適正奥行である二四メートルを超えていたので、被控訴人は、換地細則二九条本文(正背道路間が適正奥行以上の場合は、二宅地とみなしてそれぞれ評価する。)に基づき、正面路線から評価する領域と背面路線から評価する領域に分割して評価したこと、以上の事実が認められる。

右認定事実によれば、被控訴人の右評価方法は相当であり、控訴人らの主張は理由がないというべきである。

⑨ ハ、(イ)について

控訴人らは、換地一番二〇の平方メートル当たり画地評価指数は右井祐、鈴木の各換地の平方メートル当たり画地評価指数と比較して不当に高いため減歩率が高くなり、不利益である旨主張する。

しかし、右井祐、鈴木の各換地の画地評価が相当であることは右⑧に説示したとおりであること、証拠(〈書証番号略〉)によれば、右井祐、鈴木の各換地の実質減歩率は、それぞれ39.83パーセント、30.42パーセントであるに対し、控訴人らの換地一番一九及び換地一番二〇の実質減歩率は20.52パーセントであることからすると、控訴人らの主張は理由がないというべきである。

⑩ ハ、(ウ)について

控訴人らは、安藤武男の換地一一番五、換地一一番六は換地細則二三条一項ただし書(接続した同一所有者の宅地は合筆計算する。)により合筆計算しなければならないのにそうしないで平方メートル当たり画地評価指数を低くし減歩を不当に軽減した旨主張する。

しかし、証拠(〈書証番号略〉、当審証人平川)及び弁論の全趣旨によれば、右安藤の従前地七四五番一、従前地七四五番四はいずれも原判決別紙図面二記載の一四街区の集合保留地内にあったため飛換地をせざるを得なかったこと、元来換地は一筆ごとに一画地を交付するのが原則であること、そこで、被控訴人は、従前地七四五番一を換地一一番六に、従前地七四五番四を換地一一番五にそれぞれ換地の割り込みをした(この割り込みをした街区は既に正面路線価により街区評価がしてあった。)結果、たまたま右各換地は接続することになったが、従前地七四五番一は本件県道に面していた土地であり、従前地七四五番四は盲地であったため、換地についても前記の換地細則二三条ただし書を適用しなかったこと、以上の事実が認められる。

右認定事実によれば、被控訴人が、右安藤の各換地につき換地細則二三条ただし書を適用しなかったことには相当な理由があるというべきであるから、控訴人らの主張は理由がない。

⑪ ハ、(エ)について

控訴人らは、小松春治の換地一二番五、換地一二番六は換地細則二三条一項ただし書(接続した同一所有者の宅地は合筆計算する。)により合筆計算しなければならないのにそうしないで平方メートル当たり画地評価指数を低くし減歩を不当に軽減した旨主張し、これにそう証拠(当審証人宮川)が存在する。

しかし、証拠(〈書証番号略〉、当審証人平川)及び弁論の全趣旨によれば、右小松の従前地七五二番、従前地水神免七六八番外一筆はいずれも原判決別紙図面二記載の一四街区の集合保留地内にあったため飛換地をせざるを得なかったこと、そこで、従前地水神免七六八番の換地が換地一二番五に指定されたこと、そして、従前地七五二番については三か所に分割換地しなければならなくなり、たまたまその一部が換地一二番六に換地され、その余の換地は他の街区に指定されたこと、そのため、前記の換地細則二三条ただし書は適用されなかったこと、実質減歩率は換地一二番五が45.7パーセント、換地一二番六が34.5パーセントであって、平均実質減歩率29.94パーセントを超えていること、以上の事実が認められる。

右認定事実によれば、被控訴人が、右小松の各換地につき換地細則二三条ただし書を適用しなかったことには相当な理由があるというべきであり、また減歩を不当に軽減したということもできないから、控訴人らの主張は理由がない。

⑫ ハ、(オ)について

控訴人らは、被控訴人が従前地七四一番一につき鉄道修正をしているのに、換地一番二〇については鉄道修正していないのは違法である旨主張し、これにそう証拠(当審証人宮川)が存在する。

しかし、証拠(〈書証番号略〉、当審証人平川)及び弁論の全趣旨によれば、本件土地区画整理事業では、換地については鉄道接近係数を織り込んだ路線価に基づいて評価計算をしたこと、一般に接近係数は路線の中間点から対象施設までの距離により計算されること、換地一番二〇の正面路線6―Eの路線価指数については鉄道接近係数の修正が行われていないが、これは右路線の中間点から鉄道沿線までの距離が右修正を要するとされている五〇メートル(換地細則第一二号表)を超えていたことによること、一方、従前地については、その大部分が延長距離の長い里道に面し、かつ、区画の形質が非常に異なるため、これに鉄道接近係数を織り込んで評価計算をするとバランスを失し適正な鉄道接近係数を算定することができなかったため、各従前地の中心点から鉄道沿線までの距離により右係数を算定したこと、従前地七四一番一については、右五〇メートル以内であったことから鉄道接近係数の修正を行っていること、以上の事実が認められる。

右認定事実によれば、被控訴人の前記取扱いは相当であり、控訴人らの主張は理由がない。

(3) ③について

控訴人らは、控訴人らの従前地七四一番一、従前地七四六番三及び従前地七四六番一、同番二については保留地減歩をする必要がないのに、平均保留地減歩率14.464パーセントを超える保留地減歩をしており違法である旨主張する。

しかし、証拠(〈書証番号略〉、当審証人平川)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人らの従前地についても、原判決別紙図面二のとおり、里道がなくなり、周辺道路が整備・拡幅され(本件県道の幅員が一三メートルに、換地一番八の東側の道路の幅員が八メートルに、換地一番一八の南側の道路の幅員が一二メートルに拡幅された。)、土地の区画形質が整形化されたことにより、土地の利用増進が図られていること、平均保留地減歩率は14.464パーセントであるに対し、従前地七四一番一、従前地七四六番三の保留地減歩率は12.16パーセント、従前地七四六番一、同番二の保留地減歩率は11.46パーセントであること、以上の事実が認められる。

右認定事実によれば、控訴人らの主張は理由がないというべきである。

2  同3、(二)の工事未了の違法について

法一〇三条二項は、土地区画整理事業の工事が完了していないのに換地処分がなされると従前の土地に照応した換地を確定することができず、また仮に換地自体確定し得るものであっても工事未了のために使用できないといった事態を避けるために、換地処分は原則として工事が完了した後でなければなし得ないとしたものである。

そして、法一〇三条二項ただし書は、組合の定款に特別の定めがある場合には工事完了以前においても換地処分ができる旨規定し、被控訴人の定款六九条(〈書証番号略〉)は、法七七条の規定による建築物等の移転又は除却が完了した場合においては、その他の工事が完了していない以前でも換地処分ができる旨規定していることが認められる。

法七七条の規定は、仮換地上に第三者の建物がある場合には当該仮換地の指定を受けた者が使用収益することができないので、土地区画整理事業の目的達成のため施行者に建物の移転除却の直接施行を認めた規定であると解されるところ、従前地七四一番一及び従前地七四四番一上の各建物は控訴人郁次郎の所有に属し、従前地七四一番一、従前地七四六番三の持分各五五分の一、従前地七四四番一の持分六〇分の一、従前地七四六番一、同番二の持分各一〇〇分の一は控訴人郁次郎が仮換地指定処分後に贈与したものであって、その余の持分は全て控訴人郁次郎が所有しており(〈書証番号略〉)、その上、前記1、(二)、(6)のとおり、控訴人郁次郎は被控訴人からの建物移転の申し入れを拒否しているのであるから、右各建物は法七七条による移転が必要な建築物に該当しないというべきである。

そして、換地一番二〇、換地一番一九、換地一番八、換地一番一八上の各建物が現状のままでも控訴人らの各換地の利用に支障はないので、控訴人郁次郎所有の建物が移転されないことが、法一〇三条二項、定款六九条に違反することはないと解される。

3  同3、(三)の土地評価の違法について

(一) 同3、(三)、(1)について

(1) ①について

前記1、(六)、(2)、①のとおりである。

(2) ②について

前記1、(六)、(2)、②のとおりである。

(3) ③について

前記1、(六)、(2)、②のとおりである。

(4) ④について

前記1、(六)、(2)、②のとおりである。

(5) ⑤について

前記1、(二)、(4)の認定判断とおりであり、換地指定処分を取り消すほどの違法性はなく、清算金処分の違法性の問題というべきである。

(6) ⑥について

証拠(〈書証番号略〉、原審証人平川)によれば、被控訴人は、従前地七四六番二については、換地細則二三条一項ただし書(接続した同一所有者の宅地は合筆計算する。)に基づき従前地七四六番一と合筆評価し、正面道路(本件県道)から適正奥行とされる二四メートルまでは正面道路の路線価により計算し、これを超える部分は、換地細則二四条二項、二七条二項により盲地逓減率0.9を乗じて奥行修正をしていることが認められる。

そうすると、従前地七四六番二につき奥行修正することに違法はなく、控訴人らの主張は理由がない。

(7) ⑦について

前記1、(二)、(4)の認定判断とおりであり、換地指定処分を取り消すほどの違法性はなく、清算金処分の問題というべきである。

(二) 同3、(三)、(2)について

(1) ①について

前記1、(六)、(2)、⑤のとおりである。

(2) ②について

前記1、(六)、(2)、⑥のとおりである。

(3) ③について

前記1、(六)、(2)、⑦のとおりである。

(三) 同3、(三)、(3)について

(1) ①について

前記1、(六)、(2)、⑧、⑨のとおりである。

(2) ②について

前記1、(六)、(2)、⑩、⑪のとおりである。

(3) ③について

前記1、(六)、(2)、⑫のとおりである。

なお、換地一番八に対応する従前地は従前地七四四番一であり、その東側半分ではないこと、証拠(〈書証番号略〉、当審証人平川)及び弁論の全趣旨によれば、換地一番八の正面路線一八―Cの路線価の算出に当たり、鉄道修正係数マイナス0.1の減点をしているところ、これは換地細則一二号表(鉄道修正率表)のマイナス二四に当たること、これに対し、従前地七四四番一については、同表のマイナス二二の鉄道修正をしていることが認められる。そうすると、換地一番八の減価割合は従前地七四四番一のそれに比して不当に低いことはなく、控訴人らの主張は理由がない。

(四) 同3、(三)、(4)について

証拠(〈書証番号略〉、原審及び当審証人平川)及び弁論の全趣旨によれば、6―E街路の街路係数は、整理前は換地細則第三号表(街路係数)の「地区の準幹線的道路」として1.5とされ、整理後は「地区内の幹線」で商業地として4.1とされたこと、本件土地区画整理事業によって、6―E街路は、商業地にあって、街路の両側に二メートルの歩道が設置されて幅員が一三メートルとなり、北方面が旧国鉄内房線を横断し、君津市坂田を経て国道一六号線に接続し、また、南方面は主要幹線道路となった街路番号1―A、同1―Bの都市計画道路(本件土地区画整理事業により幅員二三メートルないし二五メートルに拡幅された。)に接続することになって施行地区内の幹線道路となり、街路としての系統性、連続性が高まったこと、以上の事実が認められる。

右認定事実によれば、6―E街路の街路係数を1.5から4.1に変更したことに違法はなく、控訴人らの主張は理由がないというべきである。

(五) 同3、(三)、(5)の予備的主張について

(1) 前記3、(一)、(5)、(7)を除き、控訴人らの土地評価の違法についての主張は理由がない。したがって、控訴人郁次郎、同淳子の原判決別表二の清算金処分が違法である旨の予備的主張は理由がない。

(2) そこで、控訴人郁次郎、同晃の予備的主張(すなわち、従前地七四一番一のうち二四三平方メートル及び従前地七四六番三の二〇平方メートルを田と評価したことにより清算金処分が違法になった旨の主張)について検討する。

この点については、前記1、(二)、(4)の認定判断とおり、換地指定処分を取り消すほどの違法性はない。

しかし、右認定判断のとおり、右両従前地の全体を整地として評価した場合、配当地積の増加分は、従前地七四一番一が5.24平方メートル、従前地七四六番三が0.43平方メートルであって、これにより清算金の増加分(利息を除く。)は、従前地七四一番一が二二万七五二三円(従前は二一万七七七八円)、従前地七四六番三が一万八六七〇円(従前は四五二六円)となることが認められる(〈書証番号略〉)から、原判決別表一記載の換地処分のうち清算金処分の部分は違法であり、取消しを免れないというべきである。

(3) ところで、被控訴人は、①右両従前地が整地されていた場合の配当地積の増加分(5.67平方メートル)に見合うものとして自己所有地7.53平方メートルを無償譲与する旨控訴人らに申し入れたが、控訴人らがこれに応じないため、清算金追加支払処分をしたので瑕疵が治癒された、②仮に右清算金追加支払処分が無効であるとしても、右無償譲与の申入れにより、瑕疵は治癒された、③そうでないとしても、右無償譲与あるいは清算金追加支払の申入れ(右清算金追加支払処分が無効であるとしても、贈与の申込みに当たると解される。)は控訴人らの利益になっても不利益になることはないから、控訴人らがこれを承諾せず瑕疵を主張することは、権利濫用ないし信義則違反に当たり許されない旨主張する。

これらの主張は、直接には控訴人らに対する換地指定処分の違法性についての主張に対するものであるが、換地処分のうちの清算金処分についての主張とも解されるので、検討する。

まず、①について判断する。

証拠(〈書証番号略〉)及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人は、清算人の総意に基づき、控訴人郁次郎、同晃に対し、平成四年四月一三日付け書面で、「従前地七四一番一及び従前地七四六番三の全体を整地として評価した場合、配当地積の増加分は5.67平方メートルなので、換地一番九(保留地)のうち7.53平方メートルを無償譲与する」旨申し入れたこと、ところが、同控訴人らがこれを承諾しなかったことから、同月二三日ころ、清算人の総意に基づき、右無償譲与に代えて清算金の増加分を追加して支払う旨の清算金追加支払処分を決定し、同日付け書面で、同控訴人らに対し、「清算金の追加支払をするので、その支払方法を指示してほしい」旨を申し入れたが、同控訴人らがこれに応じなかったことが認められる。そして、被控訴人が、同月二八日に行われた当審第三〇回口頭弁論期日において、同控訴人らに対し右清算金追加支払処分の通知をしたことは本件記録上明らかである。

しかし、清算金処分は換地処分の一部分であるから、その内容は換地計画において定めなければならない。そして、換地処分は、関係権利者に換地計画において定められた関係事項を通知してするものとされている(法一〇三条一項)ので、換地処分の一部分である清算金処分を変更するためには、換地計画を変更しなければならない。換地計画を変更する場合には法九七条所定の手続(その換地計画の変更に係る部分を二週間公衆の縦覧に供し、利害関係人に意見の提出の機会を与え、意見が提出された場合にはその内容を審査するなどし、都道府県知事の認可を受けなければならない。)を経なければならないから、被控訴人主張の清算金追加支払処分(清算金の変更処分と解される。)をするためには右の換地計画の変更についての法的手続を経なければならないことが明らかである。しかるに、被控訴人は右法的手続を経ていないことを自認していることからすると、被控訴人主張の清算金追加支払処分なるものは、成立していないか、成立しているとしても、重大かつ明白な手続違反により無効というべきである。

そうすると、被控訴人主張の清算金追加支払処分が存在するとしても、原判決別表一記載の換地処分のうち清算金処分の部分は違法であるとの前記認定判断に影響を及ぼさないものである(なお、被控訴人は、右清算金追加支払処分が有効であることの理由の一つとして、清算金処分が取り消されたとしても、被控訴人は清算金(変更)処分をすることなく、現実に清算金の不足額を支払えば足りることを挙げるが、清算金処分が取り消されたのち清算金(変更)処分をしなければ清算金を支払う法律上の根拠がないことは明らかであるから、被控訴人の右主張は既にこの点において失当であり、また被控訴人が現に清算段階にあるとしても、本件土地区画整理事業は未だ完成しているわけではなく、被控訴人のいわば都合により清算手続に入ったにすぎないから、被控訴人としては、清算金処分が違法であるとして取り消されれば、行政事件訴訟法三三条の拘束力に従い、清算金(変更)処分を行わなければならないというべきである。したがって、被控訴人の右主張は理由がない。)。

次に、②及び③について判断する。

行政処分の瑕疵の治癒が認められるためには、行政処分の相手方の権利救済という点、行政処分の公正な遂行の担保という点の双方を勘案してみても、行政処分を取り消す意義が認められないことが必要であると解されるところ、本件においては、少なくとも、後者の点からみて、前記清算金処分を取り消す意義が認められないということはできないから、瑕疵の治癒は認められないというべきであり、また控訴人らは、前記無償譲与及び清算金追加支払の申入れに対し承諾しない自由を有していることからいっても、控訴人らが、前記無償譲与及び清算金追加支払の申入れを承諾しないことが権利濫用ないし信義則違反に当たるということもできない。

三同4の保留地の設定について判断する。

1  本案前の主張に対する判断において判示したとおり、「保留地の設定」という行政処分は存在しないが、控訴人らの保留地に関する主張は、本件換地計画のうちの当該保留地の定めに関する部分についての違法事由が控訴人らの従前地に対する換地処分の取消事由になるとの主張とも考えられるので、換地計画のうちの保留地の定めに関する部分に違法事由があるか否かについて検討する。

2  同4、(一)の保留地の設定について

(一) 同4、(一)、(1)について

証拠(〈書証番号略〉、原審証人杉浦)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(1) 被控訴人の施行地区は国鉄君津駅に近接していたので、同駅を中心として自然発生的に昔ながらの店舗が道路に沿って存在していたが、中心となるべき商店街が存在しなかったので、被控訴人の当初の事業計画においては、既存の店舗、住宅を避けて道路を新設、変更するという設計にすぎなかった。

(2) しかし、君津市は、新日本製鉄君津製鉄所の進出などにより急激に人口が伸びて都市化が進み、昭和四五年九月、五か町村の合併により人口七万を数えるようになり、翌昭和四六年九月一日市政が施行された。そして、国鉄君津駅も従来の位置より約二〇〇メートル国鉄青堀駅の方向に移動することが確定的となり、この新駅の北側を施行地区とする坂田土地区画整理組合では駅に近接して大型店舗を誘致するための商業保留地の設定が行われることになった。

(3) ところで、被控訴人は国鉄君津駅と君津市役所とを結ぶ地域を施行地区としているところ、駅付近が都市計画法上の商業地域に指定されることが明らかとなり、また、先に述べたとおり新日本製鉄君津製鉄所の進出などにより急速に人口が伸びたにもかかわらず、君津市には中心となるべき商店街が存在しなかったため、君津商工会の昭和四五年一〇月の調査によれば、君津市民の購買力の約四三パーセントが木更津市の商業圏に吸収されているという状況にあった。そこで、控訴人らを除く被控訴人の土地所有者及び借地権者のほとんど全員に施行地区内の商業地域に君津市民の購買力を吸引するような中心的な商店街となるべき商業保留地を設けるべきであるという構想が盛り上がり、後記のとおり、法所定の事業計画変更の手続を経て、原判決別表三1記載の保留地の設定がなされた。

(4) 被控訴人は、右保留地を設けたことにより、一括売却が可能となり、売却に要する経費の節減及び事業資金の円滑化を図ることができた。そして、右保留地の設定により、住宅、店舗の移転を伴ったが、この移転補償費に充てるため、君津市から二億円の助成金の支出を受けているので、これにより組合員の負担が加重されたということもない。

以上の事実が認められる。

右認定事実によれば、原判決別表三1記載の保留地の設定につき法九六条一項及び定款七条に反する違法はないというべきである。

(二) 同4、(一)、(2)について

証拠(〈書証番号略〉、原審証人杉浦、同平川)によれば、原判決別表三1記載の保留地の設定に当たっては、昭和四七年一二月六日事業計画変更に関する総代会の議決を経て、昭和四八年二月一二日千葉県知事から右変更の認可を受けるとともに、同年三月三〇日右保留地設定について総代会の議決を受けていることが認められ、右認定事実によれば、右保留地の設定に手続上の違法はないというべきである。

3  同4、(二)の保留地の設定について

証拠(〈書証番号略〉、原審証人平川)によれば、被控訴人は昭和四九年六月二〇日控訴人郁次郎の仮換地指定(当時は控訴人郁次郎が従前地を単独所有していた。)の変更処分をしたのであるが、これと同時に、前記二、1、(二)、(6)のとおり、控訴人郁次郎所有の建物一二棟のうち七棟を移転する計画を立てたこと、被控訴人は右建物の移転に当たり、従前の建物と建物の間が約二メートルあるので、同様の間隔で建物が移転できるようにするためには、換地一番一九、換地一番二〇、換地一番八では面積が不足するので、控訴人らの利益のために原判決別表三2記載の付け保留地を設けたこと、以上の事実が認められ、右認定時事によれば、右付け保留地の設定に違法はないというべきである。

四同5の訴外高橋両名に対する換地処分については、前記のとおり、控訴人らには取消しを求める訴えの利益がないと解されるが、次のとおり、違法性も認められない。

証拠(〈書証番号略〉、原審証人平川)によれば、国鉄内房線の北側にあった従前地七六九番九は面積が三八平方メートルの過少土地なので、従前地のみで換地することになれば画地基準に達しないため従前地七六九番一と集合して換地指定したこと、原判決別表三1記載の保留地が設定されたため従前地七六九番一に対し原位置及びその付近に換地指定できなくなって、右保留地の南側に飛換地したこと、以上の事実が認められ、右認定事実によれば、訴外高橋両名に対する原判決別表四記載の換地処分に照応原則違反は認められないというべきである。

これに対し、控訴人淳子は、原審において、従前地七六九番一、従前地七六九番九はいずれも国鉄内房線の線路のすぐそばにあったのに、被控訴人がそれらに対し線路から離れた角地である換地一二番四を指定したのは訴外高橋両名を不当に有利に扱うものであって、角地であった従前地七六九番一に対し角地を換地指定するのであれば、原判決別紙図面五の一―一の保留地あたりに換地指定すべきであった旨供述する。しかし、〈書証番号略〉によれば、従前地七六九番一、従前地七六九番九については、鉄道修正によって土地の評価が低くされていることが認められ、また右保留地は換地一二番四に比べるとはるかに面積が少ないので、右保留地付近に訴外高橋両名に対する換地を設定すると、右保留地だけでは賄いきれずに、一五―一街区の画地がしわ寄せを受け、控訴人ら以外の面積の少ない画地を他の街区に飛換地せざるを得ない結果となるのである。したがって、控訴人淳子の右供述によって、原判決別表四記載の換地指定処分が適法であるとの認定が左右されることはない。

第三結論

一そうすると、予備的請求(二)は理由があるのでこれを認容すべきであるが、その余は不適法あるいは理由がないのでこれを却下又は棄却するのが相当である。

二よって、これと異なる原判決主文第二項を主文第一項のとおり変更し、その余の本件控訴はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法九六条、九二条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官越山安久 裁判官大前和俊 裁判官武田正彦)

別紙図1ないし図4〈省略〉

別表1〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例